小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)

2010/01: 初版
2020/07:GRヤリス追加

第21章:実用編Ⅰ
(峠で速いクルマをトルク・ウェイト・レシオから求める)






21-1. 峠で速いクルマとは


お待たせしました。これからいよいよ実用編です。

リッジレーサでおなじみ、峠で早い国産車はどれでしょうか?

特徴のある国産車の主要諸元を基に、車重を馬力で割ったパワーウェイトレシオ(PWR)と車重をトルクで割ったトルクウェイトレシオ(TWR)を以下の表にまとめてみました。

いずれも数値が小さい程、早いクルマという事になります。

これを見ながら、どのクルマが早いかイメージするのも楽しいと思います。

くどい様ですが、単純に直線道路で最高速度を競うのであればPWR(青いグラフ)の小さいクルマが有利ですが、カーブが多く上り坂の峠では、加速に関係する赤いグラフのTWRが重要であることは今更言うまでもないでしょう。

車名 馬力
/回転数
トルク
/回転数
重量 PWR
kg/ PS
(速度)
TWR
kg/ kgf・m
(加速)
PWR(青線)とTWR(赤線)
のグラフ
(数値は最高速度と0-100km)

F1
800 PS
12,000 rpm
(Boost up900 PS)
36.0 kgf・m
10,000 rpm
(Boost up 60 kgf・m)
691 kg 0.86
(0.76)
19.2
(11.5)
| PWR (350km/h)
|||| TWR (1.9 s)

CX650ターボ
100 PS
8,000 rpm
10.5 kgf・m
4,500-7,500 rpm
230 kg 2.30 21.9 || PWR
|||| TWR

911ターボS
560 PS
6,500-
6,750 rpm
71.4 kgf・m
2,100-4,250 rpm
(76.5 kgf・m
2,200-4,000 rpm)
1,605 kg 2.87 22.5 ||| (330km/h)
||||| (2.9 s)

458イタリア
570 PS
9,000 rpm
55.1 kgf・m
6,000 rpm
1,380 kg 2.39 25.0 |||| (325km/h)
||||| (3.4 s)

パナメーラ Turbo S
570 PS
6,000 rpm
47 kgf・m
2250-5000 rpm
1,995 kg 3.50 26.1 |||| (310km/h)
||||| (3.3 s)

レクサスLS600h
445 PS
6,400? rpm
83.6 kgf・m
4,000 rpm
単純合算値
2,230 kg 5.01 26.7 ||||| PWR
||||| TWR

911GT3RS
500 PS
8,250 rpm
47 kgf・m
6,250 rpm
1,420 kg 2.84 30.2 |||| (310km/h)
||||| | (3.3 s)

GT-R
485 PS
6,400 rpm
60.0 kgf・m
5,200 rpm
1,820 kg 3.75 30.3 |||| (309km/h)
||||| | (3.0 s)

BMW i8
362 PS
4,800? rpm
45.7 kgf・m
4,800 rpm
推定値
1,490 kg 4.11 32.6 |||| (250km/h)
||||| | (4.4 s)

レクサスIS F
423 PS
6,600 rpm
51.5 kgf・m
5,200 rpm
1,690 kg 4.00 32.8 |||| (270km/h)
||||| | (4.3 s)

ランサーEVO
300 PS
6500 rpm
43.0 kgf・m
3,500 rpm
1,420 kg 4.73 33.0 |||||
||||| || (4.5 s)

CIVICタイプR
310 PS
6,500 rpm
40.8 kgf・m
2,500 rpm
1,380 kg 4.45 33.8 |||| (270km/h)
||||| || (5.7 s)

アクセラスポーツXD
175 PS
4,500 rpm
42.8 kgf・m
2,000 rpm
1,450 kg 8.29 33.9 ||||| |||
||||| ||(7.6 s)

GRヤリス
272PS 37.7 kgf・m 1,280 kg 4.71 34.0 ||||
||||| ||

インプレッサ WRX STI
308 PS
6,400 rpm
43.0 kgf・m
4,400 rpm
1,480 kg 4.80 34.4 |||||
||||| || (4.5 s)

CX-5
175 PS
4,500 rpm
42.8 kgf・m
2,000 rpm
1,510 kg
(FF)
8.63 35.3 ||||| ||||
||||| ||(8.7 s)

LP-400
375 PS
8,000 rpm
36.8 kgf・m
5,500 rpm
1,300 kg 3.47 35.3 |||
||||| ||

ポルシェ911
350 PS
7,400 rpm
39.8 kgf・m
5,600 rpm
1,430 kg 4.09 35.9 ||||| ||||
||||| ||(4.6 s)

MAZDA SPEED AXELA
264 PS
5500 rpm
38.7 kgf・m
3,000 rpm
1,450 kg 5.49 37.5 |||||
||||| |||

フェアレディーZ
280 PS
6,200 rpm
37 kgf・m
4,800 rpm
1,430 kg 5.11 38.6 |||||
||||| |||(5.3 s)

ミニJCW
211 PS
6,000 rpm
28.6 kgf・m
1,750-5,500 rpm
1,200 kg 5.69 42.0 ||||| |
||||| |||(6.3 s)

ブレイド
280 PS
6,200 rpm
35.1 kgf・m
4,700 rpm
1,480 kg 5.29 42.2 |||||
||||| |||

デミオディーゼル
105 PS
4,000 rpm
25.5 kgf・m
1,500-2,500 rpm
1,130 kg 10.8 44.3 ||||| ||||| |
||||| ||||

セブン160
80 PS
5,500 rpm
10.9 kgf・m
3,400 rpm
490 kg 6.13 45.0 ||||| ||||| || (160)
||||| |||| (6.9 s)

エクストレイル
173 PS
3,750 rpm
36.7 kgf・m
2,000 rpm
1,660 kg 9.60 45.2 ||||| |||||
||||| ||||

S1000(推定)
127PS
6,000 rpm
20.4kgf・m
3300 rpm
930 kg 7.32 45.6 ||||| ||
||||| ||||

ノートe-POWER
109PS
3k-10k rpm
25.9kgf・m
0-3000 rpm
1210 kg 11.1 46.7 ||||| ||||| |
||||| ||||

JUKE
190 PS
5,600 rpm
24.5 kgf・m
2,000-5,200 rpm
1,290 kg 6.79 52.7 ||||| ||
||||| ||||| |

ランドクルーザ
318 PS
5,600 rpm
46.9 kgf・m
5,600 rpm
2,530 kg 7.96 53.9 ||||| |||
||||| ||||| |

アルファード3500
280 PS
6,200 rpm
35.1 kgf・m
4,700 rpm
1,940 kg 6.93 55.3 ||||| ||
||||| ||||| |

S2000
242 PS
7,800 rpm
22.5 kgf・m
6500 rpm
1,260 kg 5.21 56.0 ||||| |
||||| ||||| ||(5.4 s)

リーフ
109 PS
3,008 -10k rpm
25.9 kgf・m
0-3,008 rpm
1,460 kg 13.4 56.4 ||||| ||||| |||
||||| ||||| |

New CR-Z
136 PS
6,600 rpm
19.4 kgf・m
1,000-2,000 rpm
1,140 kg 8.3 58.8 ||||| ||||
||||| ||||| ||(8.2 s)

トヨタ86
200 PS
7,000 rpm
20.9 kgf・m
6,400 rpm
1,230 kg 6.15 58.9 ||||| ||
||||| ||||| ||(8.6 s)

三菱i-MiEV
64 PS
3000-
6,000 rpm
18.4 kgf・m
0-2,000 rpm
1,110 kg 17.34 60.3 ||||| ||||| ||||| ||
||||| ||||| ||

旧ロードスター
162 PS
6700 rpm
19.3 kgf・m
5,000 rpm
1,170 kg 7.22 60.6 ||||| ||
||||| ||||| ||

スカイラインGT-R
160 PS
7,000 rpm
18.0 kgf・m
5,600 rpm
1,100 kg 6.88 61.1 ||||| ||
||||| ||||| ||

セリカLB
130 PS
5,800 rpm
17.0 kgf・m
4,400 rpm
1,040 kg 8.00 61.2 ||||| ||
||||| ||||| ||

RX-8
235 PS
8,200 rpm
22.0 kgf・m
5,500 rpm
1,350 kg 5.74 61.4 ||||| |
||||| ||||| ||

トヨタ2000GT
150 PS
6,600 rpm
18.0 kgf・m
5,000 rpm
1,120 kg 7.47 62.2 ||||| ||
||||| ||||| ||(7.5 s)

旧CR-Z
124 PS
6,000 rpm
17.7 kgf・m
1,000-1,750 rpm
1,130 kg 9.11 63.8 ||||| ||||
||||| ||||| |||

新ロードスター
131 PS
7,000 rpm
15.3 kgf・m
4,800 rpm
990 kg 7.56 64.7 ||||| ||||
||||| |||| |||

スイフトSP
136 PS
6,900 rpm
16. 3 kgf・m
4,400 rpm
1,070 kg 7.87 65.6 ||||| |||
||||| ||||| |||

アルト ワークス
64 PS
6,000 rpm
10.2 kgf・m
3,000 rpm
670 kg 10.47 65.7 ||||| |||||
||||| ||||| |||

プリウス
136 PS
3,000? rpm
25.0 kgf・m
0-3,000 rpm
推定値
1,655 kg 12.2 66.2 ||||| |
||||| ||||| |||

タイプR
201 PS
7,800 rpm
19.7 kgf・m
5,600 rpm
1,320 kg 6.57 67.0 ||||| ||
||||| ||||| |||

プレミオ
144 PS
6,200 rpm
17.9 kgf・m
4,000 rpm
1,230 kg 8.55 68.7 ||||| ||||
||||| ||||| ||||

インプレッサスポーツ
154 PS
6,000? rpm
20 kgf・m
4,000 rpm
推定値
1,400 kg 9.09 70.0 ||||| ||||
||||| ||||| ||||

アクア
100 PS
4,800? rpm
15.3 kgf・m
0-4,400 rpm
推定値
1,090 kg 10.9 71.2 ||||| |||||
||||| ||||| ||||

Fit
120 PS
6,600 rpm
14.8 kgf・m
4,800 rpm
1,100 kg 9.17 74.3 ||||| ||||
||||| ||||| |||||

旧コペン
64 PS
6,000 rpm
11.2 kgf・m
3,000 rpm
830 kg 13.0 74.1 ||||| ||||| |||
||||| ||||| |||||

セレナ
147 PS
5,600 rpm
21.4 kgf・m
4,400 rpm
1,630 kg 11.1 76.2 ||||| ||||| |
||||| ||||| |||||

S660MT
64 PS
6,000 rpm
10.6 kgf・m
2,600 rpm
830 kg 13.0 78.3 ||||| ||||| |||
||||| ||||| ||||| |

アクシオ1.5
109 PS
6,000 rpm
13.9 kgf・m
4,400 rpm
1,090 kg 10.0 78.4 ||||| |||||
||||| ||||| ||||| |

カプチーノ
64 PS
6,500 rpm
8.7 kgf・m
4,000 rpm
700 kg 11.0 80.5 ||||| |||||
||||| ||||| ||||| |

ヴェルファイア2400
170 PS
6,000 rpm
22.8 kgf・m
4,000 rpm
1,890 kg 11.1 82.9 ||||| ||||| |
||||| ||||| ||||| |

ハスラー
(ターボ)
64 PS
6,000 rpm
9.7 kgf・m
3,000 rpm
810 kg 12.7 83.5 ||||| ||||| |||
||||| ||||| ||||| ||

N Box Turbo
64 PS
6,000 rpm
10.6 kgf・m
2,600 rpm
960 kg 15.0 90.6 ||||| ||||| |||||
||||| ||||| ||||| |||

スティングレイ
64 PS
6,000 rpm
9.7 kgf・m
3,000 rpm
880 kg 13.8 90.7 ||||| ||||| ||||
||||| ||||| ||||| |||

新コペン
64 PS
6,800 rpm
9.4 kgf・m
3,200 rpm
870 kg 13.6 92.6 ||||| ||||| ||||
||||| ||||| ||||| |||

パッソ
69 PS
6,800 rpm
9.4 kgf・m
3,200 rpm
910 kg 13.2 96.8 ||||| ||||| |||
||||| ||||| ||||| |||||

キャリー
50 PS
5,700 rpm
6.4 kgf・m
3,500 rpm
680 kg 13.6 106 ||||| ||||| |||
||||| ||||| ||||| |||||

ワゴンR
52 PS
6,000 rpm
6.4 kgf・m
4,000 rpm
790 kg 15.2 123 ||||| ||||| |||||
||||| ||||| ||||| ||||| ||||

ハスラー(自然吸気)
52 PS
6,000 rpm
6.4 kgf・m
4,000 rpm
790 kg 15.2 123 ||||| ||||| |||||
||||| ||||| ||||| ||||| ||||

ビート
64 PS
8,100 rpm
6.1 kgf・m
3,000 rpm
760 kg 11.9 124 ||||| ||||| ||
||||| ||||| ||||| ||||| ||||

N Box
58 PS
7,300 rpm
6.6 kgf・m
3,500 rpm
930 kg 16. 0 141 ||||| ||||| ||||| |
||||| ||||| ||||| ||||| ||||| |||

タント
52 PS
6,800 rpm
6.1 kgf・m
5,200 rpm
930 kg 17.9 153 ||||| ||||| ||||| |||
||||| ||||| ||||| ||||| ||||| |||||
注:30年以上前の車種については、エンジン出力がグロス表示の場合があります。
表1

上記のTWRのグラフをご覧頂きます様に、高価な日産GT-R、或いはレクサスIS Fに対し、三菱のランサーエボリューションとスバルのインプレッサが予想外に健闘しているのが分かります。

特にランサーエボリューションのトルクのピークが3500回転と比較的低い所で発生しており、尚且つ上位2車より200kg以上も軽量な(旋回性能の高い)分、峠ではもしかしたら高額車を抜き去る事が可能かもしれません。

ただし今時排気ガスを撒き散らして走っても何の意味もないので、イメージだけ楽しんで下さい。

また前記しましたエクストレイルS2000のTWRの違いも、定量的に認識して頂けると思います。

更にもっと驚きなのは三菱の電気自動車i-MiEV(アイミーブ)です。何と2000ccクラスのスポーツカー並みのTWRを出しています。

さすがに電気自動車でシグナルグランプリをする方はいなでしょうが、モーターの場合始動時に最大トルクを発生させますので、停止状態で一たびアクセルをべた踏みすれば、次の信号までなら殆どのクルマは追い付けないでしょう。 (ただしリミッターが無ければですが)

恐らくこれを読んだ方以外は、この事実を誰もご存じないでしょう。




21-2. TWRとPWRの散布図Ⅰ


TWRとPWRを散布図にプロットしてみました。


図1

こうして配置してみると各車の運動特性が一目瞭然です。

先ず左上Aの高トルクエンジン(CX-5等)と右下Cの高回転エンジン(トヨタ86等)とが対極になっているのが分かります。

特に日産とマツダのクリーンディーゼルが出るまでは、このAの領域は真空地帯だったのが驚きです。

またこれを作って予想外に思ったのは、日産のJUKEターボです。

数値で思っていたのはA領域だったのですが、赤い線上のF領域(中性能)になっていました。

ただしやはりハチロクと比べると、速度は僅かに劣るものの加速度は格段に優れています。

またCR-Zも、興味深いものがあります。

赤い線上にあるので目立ちませんが、これが何を表すかと言えば、CR-Zの最高スピードは普通車並みでありながら、加速度は2000ccのスポーツカーレベルだという事です。

特に新型CR-Zは電池をリチウムに換えた事等により、TWR(加速性能)はトヨタ86を僅かながら超えています。(もしかしたら、ホンダも86を相当意識して設計したのかもしれません)

これも低速トルクの高いモータとの組み合わせで成し得た、ハイブリッド車独特の特徴なのかもしれません。

更にこの散布図に、往年の名車トヨタ2000GTハコスカGTRを追加してみました。

40年以上前のクルマですので、今では大衆車クラスの動力性能かと思っていたのですが、どうしてどうして(トヨタ86には劣るものの)まだまだ高回転スポーツカーの一角に入っていました。

また最近トヨタ86とRX-8のどちらが早いのか質問がありましたので、RX-8を追加しました。

自動車雑誌で両者の比較記事が多数載っていますが、結局どれがどの程度早いのかさっぱり分かりませんが、このグラフを見て頂ければ加速性能はトヨタ86が僅かに優れるものの、最高スピードはRX-8の方が明らかに上なのが数値で定量的に分かります。

とは言え、両者よりも加速性能も最高スピードが優れているのは後期型のS2000で、さらにそれより加速性能が優れているのがJUKEターボなのが驚きです。

もし本気で峠を攻めたいのでしたら、JUKEターボ(それも4WD)が絶対お勧めです。

また新型コペン旧型コペンに比べ大幅に加速性能が落ち、話題のS660も旧型コペンより加速性能が劣る事が一目瞭然で分かります。

データをグラフ化する事で、今まで気が付かなかった事が見えてきます。


21-3. TWRとPWRの散布図Ⅱ


上の散布図を見て何か抜けている様に思った方は、さすがです。

実は散布図の範囲が2倍近く広がるので、一部の軽自動車と電気自動車、それにF1カーを抜かしていました。

これらを上の散布図1の外側に追加すると、以下の様になります。


これを見てどう思われますか?

恐らくこれをご覧になった第一声は、一般の軽自動車はこんなに非力なのかではないでしょうか?

そうです数値をグラフ化して普通車と比べると、私達が感覚として認識している以上に軽は非力です。

またその一方では、これらもクルマとして十分機能している事を考えると、いかに高性能車に無駄が多いかとも考えさせられます。

なお電気自動車の加速性能は散布図通りかなり高いのですが、ドライバーが予期する以上に加速するのと、電池の消耗を抑えるため、多少出力を絞っている様です。


21-4. 散布図の活用方法


どなたも新車を購入する前にそのクルマの大凡の実力を把握したいものです。

特にクルマのタイプが乗用車からミニバン等に変わる場合、どの程度早くなるのか遅くなるのか、或いは同車種における排気量の差はどの程度の違いで、どちらを選択した方が後々後悔しないで済むか悩むものです。

そんなとき上記の散布図を利用すると、購入前にクルマの動力性能を定量的に把握する事ができます。

たとえば、貴方が今までプレミオに乗っていたとします。

家族も増えてきたし資金も貯まってきたので、大型のアルファードを購入するとしましょう。

予定では2400ccを購入するのつもりなのですが、3500ccとの動力性能の差はどれくらいなのか、また今までのプレミオとどの程度の違いがあるか知りたくなるが人情でしょう。

という事で、先ず表1の抜粋をみてみましょう。
車名 馬力
/回転数
トルク
/回転数
重量 PWR
kg/PS
(速度)
TWR
kg/kgf・m
(加速)
PWR(青線)とTWR(赤線)のグラフ
(いずれも小さいほど速い)

アルファード
3500
280 PS
6,200 rpm
35.1 kgf・m
4,700 rpm
1,940 kg 6.93 55.3 ||||| ||
||||| ||||| |

プレミオ
144 PS
6,200 rpm
17.9 kgf・m
4,000 rpm
1,230 kg 8.55 68.7 ||||| ||||
||||| ||||| ||||

ヴェルファイア
2400
170 PS
6,000 rpm
22.8 kgf・m
4,000 rpm
1,890 kg 11.1 82.9 ||||| ||||| |
||||| ||||| ||||| |

上記を見ると、3車間の順位は何となく掴めますが、やっぱり良く分かりません。

このため、3車のPWRとTWRを、散布図(グラフ1)にプロットしてみましたがいかがでしょうか?



これを見ると、全体の分布における3車の実力と、それを元にした3車の特徴がより正確に把握できるのできます。

先ず想像していた以上にアルファードの2,400ccと3,500ccで、動力性能に差があるのが分かります。

特に3,500ccの動力性能は、スポーツカー群よりも上に位置する事から、それらよりもっと加速性能が良い事が一目瞭然に分かります。

また2,400ccは、 実はプレミオあるいはFITよりも動力性能が劣る事が分かります。

という訳で、もし新車購入予定のある方は、この散布図にご自分が現在乗っているクルマと購入予定のクルマのPWRとTWRをプロットしてみる事をお勧め致します。

非常に感覚的な自動車雑誌の試乗記よりも、余程役に立つと思います。

この章のまとめです。

アルファードの3,500ccはスポーツカー並みに速い、だが2,400ccは大衆車よりも遅い。


21-5. PWR(パワーウェイトレシオ)の単位とその意味


説明が多少前後しますが、パワーウェイトレシオの単位とその意味についても正確に理解しておきましょう。

PWRはクルマの重さを馬力で割った値ですので、単位はkg/PS(馬力)と書かれるのが一般的です。

ところが、これを更に基本単位(これ以上分解できない単位)に分解していくと、実は非常に奥深い意味を持っている事が分かるのです。

先ず分子のkgは、質量ですのでこれ以上分解できません。

次に分母のPS(馬力)ですが、これを分解するとkgf・m(トルク)×1/s(回転数)で、このf(力)を更に分解するとkg・m/s2・m×1/sになります。

これらを当初のkg/PSに入れると、以下の様になります。

kg / PS = kg / (kgf·m/s) = kg/ (kg·m/s2·m/s) = s3/m2 = s3· m-2

すなわち、kg/PSの基本単位とは、s3/m2なのです。

とは言え、少し物理の知識がある方でも、この単位が何を意味するのか良く分からないのではないでしょうか?

ヒントは、このs3/m2とは、速度(m/s)と加速度(m/s2)の積の逆数なのです。

でも本書をここまでじっくり読んで頂いた方には、(多少手前味噌ではありますが)以下の図を見て薄々気が付いて頂けるのではないでしょうか。


75kgの重りの付いた台車を1秒間に1m(時速3.6kg)矢印方向に移動する力(パワー)を、1馬力と呼ぶ

そうなのです、もしクルマの速度を正確に算出したいのならば、車重を馬力で割るのではなく、クルマの抵抗(上図台車の重り)を馬力で割りたい所ですが、クルマの抵抗は測定しないと分かりません。

ただもしクルマの抵抗を測定して馬力で割ったとしたら、計算式の分子がkgではなくkgf・mになりますので、この場合の単位はs/mと速度の逆数になります。

話を元に戻しますと、s3/㎡のうちのs2/mは、加速度の逆数で、クルマの抵抗である重りに掛る加速度が残っているという訳です。

もっと簡単に言うと、抵抗力を馬力で割れば速度が出るのですが、抵抗力が正確に分からないので、車重で代用していて、加速度の単位が残っているのです。

ただしそれが不正確かと問われるとそうでもありません。

クルマの抵抗は、主に摩擦力と風力になりますが、摩擦力の場合車重に摩擦係数を掛ければ求められますので、とりあえず車重だけで算出してもクルマの性能の比較をする事は可能という訳です。

長くなってしまいましたが、PWRには加速度の単位が残っているものの、PWRは速度の逆数を表しているという事です。


21-6. TWR(トルクウェイトレシオ)の単位とその意味


PWRの説明をした以上、TWRの単位についてもまとめておきましょう。

先ずTWRの単位は、kg/kgf・mです。

kgf・mとは、kg·m/s2·mですので、これを元の単位に入れると以下の様になります。

kg/kgf·m=kg/(kg·m/s2·m)=s2/m2=s2·m-2

TWRの単位が、s2/m2になりましたが、この意味は分かりますでしょうか?

加速度の単位がm/s2ですので、それにmを掛けて逆数にしたのが分かります。

これからすると、どうも加速度の逆数を意味する様ですが、ならばmとは何の長さでしょうか?

その通り、タイヤの半径です。

もしエンジンの軸(クランクシャフト)とタイヤの軸が1対1で回っているとしたら、TWRに更にタイヤの半径を掛ければ、クルマの加速度が分かるという訳です。

以上をまとめますと、ギヤ比とタイヤの径の違いがあるものの、TWRとはクルマの加速度の逆数を表わしているという事です。





21-1. 峠で速いクルマとは/第21章: 実用編Ⅰ




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