ロジックで迫る雪道に強いクルマとは
Issued on Jan. 14, 2015
Revised on Mar. 13, 2016
Revised on Mar. 13, 2016
目次
はじめに
雪道に強いクルマとは、どんなクルマなのでしょうか?
そう訊かれれば、恐らく大多数の方は4輪駆動車だと答えるのでしょう。
でも本当にそうでしょうか?
その割には、雪道の路肩に落ちている4輪駆動車をよく見かけませんか。
それも急カーブではなく、何の変哲もない直線道路の脇で。
なぜなのでしょうか?
小学生でも分かるトルクと馬力の話の作成チームが、無謀にもこの難題に挑戦してみました。
あくまでも推測なので、100%正しいという事はあり得ないのですが、かと言って100%間違っている事も無いと考えています。
いずれにしろこれを読んで頂ければ、雪道をより慎重にかつ論理的運転して頂くきっかけになると確信しております。
また合わせて、雪道走行の装備と心構えとマル秘テクニックをご紹介しておきます。
そして最後に本サイトが勝手に雪道に強いクルマを上げたいと思います。
2. 雪道に強いクルマ
2-1. 概要
それでは、本当に雪道で一番強いクルマが4WD車かどうか、ロジカルに検証してみましょう。
まずクルマの基本特性ですが、走る、止まる、曲がるの3点である事に異論は無いでしょう。
この走る、止まる、曲がるの3点の特性について、どのクルマ(エンジンレイアウト+駆動方式)が雪道に一番適しているか考えてみたいと思います。
具体的には、それぞれの特性において車種毎に相対的な点数を付けて、最後に総合点でどれがベストか判断したいと思います。
2-2. 雪道で走行性能の高いクルマ
はじめにでもお伝えしました様に、雪道で走行性能の高いクルマとなれば4WDで、どなたでも異論のない所でしょう。
実際雪国では、4WDが多く走っています。
では次は何でしょう?
先に結論を言ってしまいますと、以下の順番になります。
4WD>FF=RR>MR>FR
それでは、なぜ4WD(4輪駆動)が一番雪道に強いのでしょう。
その理由は簡単で、滑り易い雪道において、4輪全てが駆動するからです。
それではなぜFF(フロントエンジン+前輪駆動)が、2番目に強いのでしょうか?
それも簡単で、駆動する前輪の上にエンジンがあるので、駆動輪に十分な荷重が掛るからです。
次のRR(リアエンジン+後輪駆動)も同じ理由で、駆動する後輪にエンジンの荷重が掛るからです。
残った2台のMR(中央エンジン+後輪駆動)とFR(フロントエンジン+後輪駆動)ですが、いずれも駆動輪にエンジンの荷重が掛らないものの、MRの方がエンジンが後輪に近い分、FRよりも荷重が駆動輪に掛るという訳です。
←←←←←←←←
そして最後に残ったのがFRで、駆動輪への荷重が一番小さい事から、雪道に一番弱いという訳です。
駆動方式と言う割りには、殆ど駆動輪に掛っている荷重の話になったのに気が付いて貰えましたでしょうか?
これに点数付けをすると以下の様になります。
4WD | > | FF | = | RR | > | MR | > | FR | 計 |
5 | 3.5 | 3.5 | 2 | 1 | 15 |
すなわち、雪道で最も走行性が高いのは、間違いなく4WDという訳です。
2-3. 雪道でブレーキ性能の高いクルマ
前段の走行性能は、あきらかに4WD車がトップでした。
でしたら、ブレーキ性能もトップと言えるでしょうか?
答えはNOです。
これについて、駆動方式とエンジン位置に分けて考えてみましょう。
【駆動方式】
まず駆動方式です。
ご存じの通り、どんなクルマでもブレーキを掛ければ4輪が止まろうとしますので、ブレーキ性能と駆動方式には一切関係しないと言えます。
言ってみれば、ブレーキング時は全てのクルマは4WDになると言えるかもしれません。
こう言うと、中にはエンジンブレーキは駆動輪にしか働かないと言う方がいらっしゃるかもしれません。
確かにエンジンブレーキ主体でスピードを落とそうとした場合、制動時に荷重が増える前輪を駆動するFFや4WDの方が有利と言えるかもしれます。
特に雪道の下り坂の様に、強くブレーキを踏むのをためらう様な場合は、強くそう感じるかもしれません。
ですが、エンジンブレーキと各輪のブレーキ力とを比べれば、エンジンブレーキは無視できる程度のものですので、総体的に考えれば制動性能は駆動方式には因(よ)らないと言えます。
なお走破性能を高めるために前後輪を直結する4WD車においては、強くブレーキを踏むと機構上4輪全てがロックしますので、この場合一番危険なブレーキ性能とも言えるのですが、特殊な車両(ケース)なのでここでは割愛します。
【エンジン位置】
それでは次に、エンジン位置(荷重の位置)について考えてみましょう。
これについては、更に静的と動的の二種類に分けて考えてみます。
1) 静的
静的というのは、クルマが(まるで止まっている様に)限りなくゆっくり走っている状態と思って頂ければ良いと思います。
この場合、車輪に掛かる荷重は停止時と同じと言えます。
すなわちもしFF車であれば、エンジンの荷重の大半は止まろうとする前輪に掛かりますし、FR車であってもエンジン荷重の大半はやはり止まろうとする前輪に掛かりますので、エンジンの位置もブレーキ性能には関係しないと言えます。
2) 動的
ところがクルマが実際に動き始め、動的な状態になると事態は少し変化します。
この状態でブレーキを踏むとクルマはつんのめる様に、下の写真の様に前部が下に沈みます。
ノーズダイブ(重量物であるエンジンが前にあるとフロントが沈み易い)
これは止まろうとするタイヤに対して、前に進もうとする車体上部の力(赤の矢印)によって、車体を下前に回転させ様とする力が働くからです。
この場合、後輪側に荷重の掛っているRR車あるいはMR車の方が、フロントにエンジンのある他車よりノーズダイブが少なく、制動時に前後車輪に均等に荷重が加わる分、ブレーキ性能は優れていると言えます。
雪道の様に滑り易い路面ではその効果は一般道ほど顕著ではないのですが、相対的に見ればやはりRR車やMR車の方が有利なのは間違いないと言えます。
という訳で、リアが重い順に相対点数を付けると以下の様になります。
RR | > | MR | > | FF | = | 4WD | = | FR | 計 |
5 | 4 | 2 | 2 | 2 | 15 |
すなわち、雪道でブレーキ性能が最も高いクルマは、間違いなくRR車になります。
2-4. 雪道で旋回性能の高いクルマ
それでは次に雪道で旋回性能の高いクルマについて考えてみましょう。
一般道で考えれば、操舵輪である前輪に荷重が掛っているクルマがやはり旋回性能が高くなり、滑り易い雪道でも間違いなくそれが言えます。
となると以下の様に、エンジンが前にある4WD、FF、FRが同じで、以下MR、RRとつづきます。
4WD=FF=FR>MR>RR
さらにこれに点数付けをすると、以下の様になります。
4WD | = | FF | = | FR | > | MR | > | RR | 計 |
4 | 4 | 4 | 2 | 1 | 15 |
なおカーブでも4WDが一番優れていると思われるかもしれませんが、そう感じるのは4WDが機構上(前輪と後輪に駆動を伝えるシャフトとデフが必要になる)一番重くなるため、その分タイヤのグリップが良くなるからに他ありません。
またMR(中央エンジン+後輪駆動)車は中央に重心があるので、回頭性が高いなど言われますが、これが言えるのはクルマが自転する(回転の中心がクルマの内部にある場合)で、カーブの様にクルマが公転する(回転の中心がクルマの外にある)場合、他車と何も変わりません。
クルマが自転する場合
重心が中央だと回頭性高い 重心が前部だと回頭性低い
重心が中央だと回頭性高い 重心が前部だと回頭性低い
クルマが公転する場合(カーブを曲がる場合)
重心がどこにあっても旋回性能(公転性能)に差は無い
重心がどこにあっても旋回性能(公転性能)に差は無い
2-5. 総合得点
さてそれでは総合得点を見てみましょう。
性能\駆動方式 | 4WD | FF | MR | RR | FR | 計 |
走行性能 | 5 | 3.5 | 3.5 | 2 | 1 | 15 |
ブレーキ性能 | 2 | 2 | 4 | 5 | 2 | 15 |
旋回性能 | 4 | 4 | 2 | 1 | 4 | 15 |
総合得点 | 11 | 9.5 | 9.5 | 8 | 7 | 45 |
上の表にあります様に、5車の中ではやはり4WD車がトップになりましたが、予想通りだったでしょうか。
まとめると、やはり4WDとFFが雪道で強く、FRが一番雪道に弱いという事になります。
ただし、もう一つ重要な事があります。(むしろこちらの方が大事です)
上記表をご覧頂きます様に、4WDは明らかに走行性能が他車より優れているものの、旋回性能とブレーキ性能は、雪道に弱いとされているFR車と同じレベルだという事です。
すなわち、4WDに乗って調子に乗ってスピードを出すと、旋回性能とブレーキ性能はFR車並みですので、事故を起こす可能性が非常に高いという事です。
4WD車の旋回性能とブレーキ性能はFR車並み
雪道における4WDは、偏った特性を持っている事を強く認識しておく事が必要です。
さて、雪道に強いクルマとその弱点が分かった所で、今度は雪道に弱いクルマを見てみましょう。
むしろこちらの方が、何方も抵抗なく納得して頂けるかもしれません。
1. はじめに