誰も書かないホンダS660の真実

2015/4/7(火)

目次



1. はじめに


2015年3月30日、ついにS660が発売されました。


ミッドシップ2シーター軽スポーツカー ホンダS660

低トルク高回転エンジンを搭載したホンダS2000やビートの失敗から、今度こそ高トルクエンジンを積むと期待していたのですが、最大許容回転数が7,000回転以上と聞いてガックリしてしまいました。

またも高回転エンジンです。

と思い込んでいたのですが、色々調べてみると何か変です。

何がどう変なのか、そして走りの実力はどうなのか、いつもの通りそのスペックから探ってみたいとと思います。

と思って書き始めたのですが、調べれば調べる程、雑誌では一切述べられていない衝撃の事実が分かってきました。

もしかしたら貴方が知りたくなかった事ばかりかもしれませんので、興味のある方のみお読み下さい。


2. 奇妙なエンジン性能曲線


それでは早速S660のエンジンスペックを調べてみると、最大トルクは2,600回転で10.6 kgf・m (104N・m)となっています。

通常7,000回転まで回せる軽自動車のエンジンとなると、4,000回転でせいぜい6kgf・m程度が相場ですので、どう見ても高トルクエンジンです。

という訳でエンジン性能曲線を調べて見た所、もっと驚きました。


S660とBEATのエンジン性能曲線

何でしょう、このトルクカーブ(赤の破線)は。

常用域の2000~4,000回転まで100N・m(10kgf・m)以上の高トルクを維持していながら、4,000回転以降急激にトルクが下がり、それでいながら7,600回転まで回せる様になっています。

同じチャート内のホンダBEATのエンジン性能曲線と比べると、その差は一目瞭然です。


ミッドシップ軽自動車のホンダBEAT

S660の低速トルクはBEATの2倍以上もありながら、4,000回転以降の落ちは急激です。

このため5,000回転以降、出力(馬力)は全く変わりません。

となると、5,000回転以上回せる必要性は全くありません。

何故ならば、もし5,000回転以上回しても最高速は変わらないにも関わらず、加速と燃費はどんどん悪化するからです。

ですので、もしS660のマニュアル車を運転するのでしたら、5,000回転まで使った走行が間違いなく速く走れます。

訂正
2016/3

と、今までは上記の様に記載していたのですが、その後本書独自でS660の走行性能曲線を作成してみました。(詳細はこちらへ)


その結果、この様なトルクカーブにおいても、最速で走るためにはレッドゾーンの始まる7,600回転まで回してシフトアップした方が早く走れる事が判明しました。

この場合、一速以外はトルクが落ちる所を使い続ける(シフトアップするとすぐにトルク低下領域に入る)ので奇妙な気がしますが、0-400mの様に加速度を競う場合は、これが一番早く走れる方法です。

ただしこの様な走りをすると燃費は急激に悪化するにも関わらず、どんなに頑張っても所詮は軽自動車ですので、追いつけるのはカローラクラスまでだという事を忘れないで下さい。

エンジンを強化したS1000の発売が待たれます。

さてトルクが急激に下がる理由ですが、考えられるのは以下の3点です。

1)自主規制の64PS(47kW)を守るため、敢えて高回転域でのトルクを下げた。

2)営業部門の強い要求で(高回転エンジンこそ高性能の証だと思っている顧客用に)、しかたなく高回転まで回せる様にした。

3)低回転域におけるトルクアップを最優先したため、その弊害として高回転域での燃焼効率が大幅に低下した。


ただし、どれが正解かは後程お伝えするとして、常用回転域である2,000~4,000回転で10kgf・m以上の高トルクをフラットに維持しているのは、大したものです。

ホンダもついに高トルクエンジンに舵を切った様にも見えます。

またトルクがフラット(頻繁にギヤチェンジする必要がない)なので、思い切ってマニュアルを選ぶ価値もあります。

実際前出の走行性能曲線をご覧頂きます様に、その気になれば4速のままで30~90km/hをカバーできてしまいます。

このあと、S1000やS2000も計画されている様ですが、多少期待できそうです。

と思ったのは束の間で、この奇妙なエンジンを更に調べてみると、とんでもない事実が分かりました。




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