小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)

2010/01: 発行
2020/01: 更新

第9章:雑学1



9-1. クルマの剛性


よく自動車雑誌に、このクルマの剛性は足りない、あるいは欧州車に比べ日本車の剛性は劣る等の記事を見かけますが、はたしてそれは事実なのでしょうか?

またその剛性を正確に五感で判定できるのでしょうか?

もしYESと言うならば、クルマのどこに、どんなセンサーを付けて、何を測れば、剛性を測定できるのか訊きたいものです。


クルマの剛性が分かるという関係諸氏はその根拠を示す必要がある

もしどこをどうやって測定するのか言えないものの、人間の感覚は優れているので、自分なら分かると言い張るのならば、詐欺師か霊感師か祈祷師と同じです

もしかしたら単に扉の開閉音、走行中のきしみ音/振動/騒音の大小を剛性と誤解しているだけではないかと思うのですが、皆さんはどう思われるでしょう。

さらにもっと言わせて頂ければ、医者にしろ、調理師にしろ、画家にしろ、通訳者にしろ、運転手にしろ、何かしらの公的な免許なり認可を受けているのですが、自称自動車評論家(モータージャーナリスト)、或いは自動車雑誌の記者なる方々は、一切その様なものを受けていないのです。

それが何を意味するかと言えば、自分は人よりもクルマについて詳しい筈だと自分が思っているだけの人が、測定器でも測るのが難しいであろうクルマの剛性を、ちょっと乗っただけで神業の様に判断できると主張している訳です。

おかしくありませんでしょうか?

例えばですが、全く同じ外観でねじり剛性の異なる3台のクルマを運転して、その順位を決定するテストに合格した自動車評論家もしくは記者が居れば、信じるに足るコメントかもしれません。

ですが、ねじり剛性の意味すら分からない者が、剛性がある/ないのコメントをして、どんな意味があるのでしょうか?

もし色々なクルマを運転した事だけが自慢でしたら、運転代行業者かバレットパーキングの係員の方が数倍上手です。


ホテルのバレットパーキング

そもそも下調べはおろか、チェックシートも用意しないでクルマの評論ができるのでしょうか。


9-2. 電気自動車


本サイトを何度か覗いて頂いている方でしたら、電気自動車の速さは十分ご理解頂いている事でしょう。

何しろ電気モータはトルクの塊で、特に始動時はエンジンの数倍のトルクがあるのですから、加速が良いのも当然です。


上の図は三菱の小型電気自動車i-MiEVのトルク特性ですが、一般的なターボ付き軽自動車と比べても、始動時のもならず全域でトルクが下回る事がないのも驚きです。


三菱の軽自動車であるi(アイ) をベースに作られた電気自動車のi-MiEV

ちなみにi-MiEVと、同じく電気自動車の代表格である日産リーフのTWRとPWRをいつもの散布図に載せると、以下の様になります。

車種別のTWRとPWRの散布図上での電気自動車の位置

小さくて見難いですが、赤丸内の左側にある赤白のクルマが三菱i-MiEVで、赤丸内の右側にある青色のクルマが日産リーフです。

このチャートが何を表しているかと言えば、現在市販されている電気自動車の最高速度は軽自動車並みでありながら、加速度は高回転エンジンを搭載したスポーツカー並みなのです。

特にi-MiEVのTWR(トルクウェイトレシオ)は60.3ですので、トヨタ86の58.9に伯仲しており、且つ旧ロードスターの60.6よりも優れています。

  
60.6      60.3     58.9
i-MiEVのTWRはスポーツカー並み

という事は、お伝えしております様にモーターのトルクは回転数が低いときに高いので、これらのクルマとの距離の短いシグナルグランプリであれば、i-MiEVの圧勝なのは間違いありません。


9-3. 黄色のフォグランプは何か効果があるのか?


最近は余り見なくなりましたが、フォグランプやヘッドランプの一部に黄色のバルブが使われている場合があります。


黄色のフォグランプに効果はあるのか?

これによって、霧の日に見通しが良くなる等の何か効果があるのでしょうか?

答えは、残念ながら黄色だと分かる以外何のメリットもありません。

もしかしたら黄色だと、可視光の中でも多少波長が長いので霧の中でも光を通す(乱反射し難い)と期待されるかもしれません。


ですが、実際に黄色のヘッドランプにしても何も変わりません。

実際、世界中どのランプメーカも(シビエもオスラムもスタンレーもPIAAも小糸もマーシャルも)、ランプを黄色にすると濃霧でも視界が良くなるとは一切謳っていません。

         

またもし黄色の光が霧の中で最も透過し易いのでしたら、霧の中で遠くにあるクルマの白色のヘッドライトを見たら、(波長の短い光は乱反射し)黄色もしくは赤く見える筈ですが、そんな事は全くありません。

実際に試してみて頂きたいのですが、霧の夜に懐中電灯で遠くを照らします、次に懐中電灯の前に黄色のセロファンを付けます

一気に遠くまで見渡せる様になりますでしょうか?

周囲が黄色くなったこと以外、何も良い事が無いと分かって頂けると思います。

また一部には、人の目が黄色を感じ易いからという説もありますが、これもとんでもない間違いです。

下のグラフにあります様に、人が一番感じ易い色は、緑なのです。


人の目が一番感じ易い光は緑色

ですので、もしその説が正しければ、フォグランプは緑色にすべきでしょう。

ついでなのでもう少し付け加えますと、人の感じ易い光は、暗くなるにつれて徐々に緑から(黄色からさらに遠い)青色方向にシフトしていくのです。


暗くなって人の目が一番感じ易い光は青色

もうこれだけ言えば十分でしょう。

黄色のランプに付け替えて霧の中を走っても、何一つメリットはありません。

むしろ光源のスペクトルを黄色の波長に絞る(白色のランプに黄色のフィルターを付ける)と、光量は著しく低下しますし、夜間に色に対する識別能力も落ちる事になります。

元から黄色のヘッドライトならばそれでも良いのですが、もし霧の日対策のために交換しようと思うのであれば、考え直した方が良いのは間違いありません。

ファッションと割り切っていれば良いのですが、問題は費用(コスト)に見合う効果(ベネフィット)があるかどうかです。

フォグランプも白にすべきです。


9-4. AT車とMT車


以前日本と比べてヨーロッパでは、ディーゼル車が非常に多い(最近はディーゼル規制で多少変化がありますが)とお伝えしましたが、日本とのクルマ事情の違いを、もう一点ご紹介しておきましょう。

それは変速機(AT/MT)です。

日本ではAT車が主流ですが、ヨーロッパではATは燃費が悪く、且つ初心者の乗り物と思う傾向があり、殆どがマニュアル(MT)車です。

ですので、ヨーロッパで中古のAT車を購入しようとすると、かなり苦労します。




9-5. ハイオクガソリン


またもう一点、誤解の多いハイオクガソリン(正確にはハイオクタン価ガソリン)についても、ご説明しておきましょう。

先ずハイオクガソリンとレギュラーガソリンの違いですが、当然ながら値段も高く、高出力エンジンに使用するハイオクガソリンの方がレギュラーガソリンより燃えやすいと思われていませんか?

残念ながらそれは間違いで、実はハイオクガソリンの方がレギュラーガソリンより燃え難いのです。

それでは何故ハイオクガソリンが高出力エンジンに使われるのでしょうか?

非常に簡単に述べると、エンジンを高出力にするにはエンジンシリンダの圧縮率を高めれば良いのですが、圧縮率を高め過ぎると気化されたガソリンが(プラグが点火する前)に自然着火してしまうため、燃え難いガソリンが必要となる訳です。

最近のクルマでは経験する事は少なくなりましたが、低速走行時に加速しようとアクセルを強く踏むとエンジンからカリカリ音が聞こえました。

これがエンジン内のガソリン濃度が高くなって自然着火したときの音で、ノッキング音と呼ばれエンジンにストレスを与えます。

この自然着火を防いで、高出力を得るのがハイオクガソリンです。

このハイオクガソリンより更に燃え難いのが軽油になりますので、それを使うディーゼルエンジンがいかに高出力エンジンであるかが分かって頂けると思います。


9-6. フェンダーミラー


今では殆ど見なくなったフェンダーミラーですが、実際に使ってみるとサイドミラー(ドアミラー)より使い勝手は明らかに上です。

     
セリカLB         サバンナRX-7          トヨタ2000GT

理由は簡単で、サイドミラーは視線を横に向けてサイドウィンドウから見るのに対して、フェンダーミラーはフロントウィンドウから見えているので、常時斜め後方の状況を掴んで運転できるためです。

このためサイドミラーで車線変更する場合、先ずサイドミラーに視線を移して斜め後方の状況を確認し、次にウィンカーを出してやがて車線変更になりますが、フェンダーミラーでしたら車線変更しようと思った時点でウィンカーを出す事が可能になります。 (ただしいずれの場合も、車線変更前に目視による後方確認は必要です)

また若干視界が広い事もあって、3車線の端から端への車線変更も楽にできます。

背の低いスポーツカーの場合、支柱も低くなります(車高が高いと支柱も高くなります)ので、多少ノスタルジックでもありますが弾丸ミラーにもいけるのではないかと思うのですが、いかかがでしょうか?

本田City(車高が高いとフェンダーミラーも高くなる)

ドアミラー認可後(1983年)、フェンダーミラーが一掃されてしまいましたが、何とも不思議な話です。

殆ど弊害だらけの、サスペンションやマフラーの交換より、こう言った変更の方が、理があって且つお洒落の様な気がしますが、いかがでしょうか?


9-7. ワックス掛けの費用対効果


さて次は、クルマのワックス掛けの話です。

皆さんはどう思われますか?

ワックス掛けは、効果がありますか?

恐らくそう訊かれれば、大半の方が効果があると答えられるでしょう。

なにしろ、カー用品店に行けば、あれほどワックス製品があふれているし、確かにワックス掛けした直後はクルマは見違える様に綺麗になります。

     

でもそれが、何日持続しますでしょうか?

どなたも経験があると思いますが、恐らく綺麗に感じるのはせいぜい数日ではないでしょうか?

またあまり認識されないかもしれませんが、(特に白いクルマの場合)ワックス掛けの後に雨が降ると、ワックス(ロウ)の撥水効果により雨水が車体表面を線上に流れ、その水に含まれる汚れがワックスに付着し、筋状の汚れになって残ります。

この汚れが頑固で、乾いた雑巾で拭いても落ちない程こびり付いてしまい、またまたワックスを掛けをしないと落ちません。

これを表にまとめると、以下の様になります。

コスト 効果 弊害
①ワックス代

②ワックス掛けをする労力
①車体がピカピカになる。
(ただし数日で効果は消える)
②ワックス掛けして一汗かいた後のビールが旨い。

③休日に仕事をしたという満足感に浸れる。
雨が降ると、筋状の汚れが付着する。
ワックス掛けの費用対効果

上の表を見て、どう思われるでしょう?

効果のみを考えると当然ながらワックス掛けをする価値はあるのですが、費用対効果として考えるとかなり怪しくなってくる気はしませんでしょうか?

という訳で、当サイトの一方的な結論としては、費用対効果を考えると数日で効果が無くなるワックス掛けは不要であると断言したいと思います。


9-8. 窓拭きは水拭きがベスト


ワックス掛け不要論の次は、窓拭きの話です。

綺麗な窓ガラスは、運転していても気持ちが良くなりますが、皆さんはどうやって清掃されていますでしょうか?

大半の方が洗車した後に、乾いたタオルで拭かれいるのではないでしょうか?

ですが、窓ガラスだけを拭く場合、どうされていますでしょうか?

やはり以下の様な市販のクリーナーを使われていますでしょうか?

       

ですが、本サイトお勧めの窓拭き方法は、(化学溶剤を一切使わない)単純な水拭きです。

それだけで綺麗にならないから苦労しているのだと怒られそうですが、クリーナを使うよりも簡単で綺麗になりますので、是非一度お試し頂ければと思います。

用意するのは、タオルと霧吹きだけです。

タオルは目の細かくて柔らかいタイプではなく、目が粗くて少しザラザラ感のある物の方が汚れを取りやすく、且つ拭く力も少なくてすみます。

次にタオルがしっとり湿る程度に、霧吹きで水を拭き掛けます。

なにも霧吹きを使わなくても思われるかもしれませんが、ここが大事な所です。

タオルを直接水に浸すと、どんなに強く絞っても、窓ガラスを拭くとどうしても水が筋状に残ってしまいます。

こうなると、次にまた空拭きをしなければなりません。

ところがしっとり湿ったタオルを使うと、汚れも落ち、且つ全く水跡を残す事なく吹き上げる事ができるのです。

もしここでガラスクリーナーを使うと、確かに溶剤が汚れを包み込んで浮き上がらせてくれるのですが、それをタオルで拭くとガラス上に溶剤と汚れを薄く延ばしてしまう事になり、やはり空拭きしなければなりません。

しっとり湿ったタオルで拭けば、空拭きの必要もなく一回で窓ガラスは綺麗になります。

ところで、何故か窓ガラスに付いた汚れを”油汚れ”と呼びますが、これも正確には間違いです。

もしクルマの窓ガラスに油が付くぐらいなら、歩道を歩いている歩行者も油まみれになります。

窓ガラスに付いた汚れは、基本的には水溶性ですので、水拭きで完全に除去できます。

窓ガラスに着いた虫の死骸も水溶性ですので、湿ったタオルで間違いなく除去できます。

騙されたと思って、是非一度お試し頂ければと思います。


さて続く雑学2は、大昔から続く永遠のテーマと言えるかもしれない、慣らし運転とエンジンオイルに関してです。

どういう結論に至るか、もし興味がありましたら覗いてみて下さい。




9-1. クルマの剛性を判定できる自動車評論家など存在しない/第9章: 雑学1





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