小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)
2016/05:発行
2020/01/12: 全面改訂
2020/01/12: 全面改訂
第8章:燃費
1. 速く走ると燃費は悪くなるのか?
本項はスピンオフして以下に引っ越しました。
2. 燃費を良くするにはどうすれば良いのか?
燃費を良くするにはどうすれば良いか?
今更述べる必要もないだろうと思って試しにネットで調べてみると、書かれているのは以下の様な事です。
丁寧な運転を心掛ける
アイドリング時間を減らす
渋滞の道を避ける
十分な車間距離を取る
エンジンブレーキを多用する
短距離走行を控える
車内の荷物を減らす
アイドリング時間を減らす
渋滞の道を避ける
十分な車間距離を取る
エンジンブレーキを多用する
短距離走行を控える
車内の荷物を減らす
間違いとは言わないまでも、何これ?と思うものもあります。
恐らくネットにある記事を寄せ集めれば、こんな感じになるのでしょう。
ですが、何事もロジックで迫る本書は違います。
という訳で、先ずはクルマが走行時に受ける抵抗を考えてみます。
この抵抗を減らせば減らすほど、燃費が良くなるのは間違いありません。
その抵抗ですが、クルマの場合下の図にあります様に、大きく分けて三つあります。
日本自動車タイヤ協会作成資料
それは空気抵抗と加速抵抗、それにころがり抵抗です。
これ等を順に見ていきたいと思います。
空気抵抗
ご存知でしょうか?
クルマの空気抵抗を減らす最も有効な手段は、車両前面の空気取り入れ口を塞ぐ事です。
とは言え、そんな事をしたらラジエターに空気が当たらなくなりますので、あっという間にエンジンがオーバーヒートしてしまいます。
また側面に飛び出した再度ミラーを外すのも効果大なのですが、さすがにそれもできません。
となればできる事はただ一つです。
ルーフキャリアを外す
もし後付けしたルーフキャリアやエアロパーツ等があれば外す事です。
ルーフキャリはクルマ上面の風の流れを大幅に乱す
空気抵抗はクルマの全面投影面積に比例するのです、例えばルーフキャリアのバー程度であれば、クルマ本体の全面投影面積と比べると大した邪魔(抵抗)にはならないと思う方も多いでしょう。
空気抵抗はクルマの全面投影面積に比例する
実際クルマが受ける空気抵抗は、以下の式で表されますので。投影面積から見れば然程大きな増加ではありません。
空気抵抗 = 1/2 x 空気密度 × 前面投影面積 × 速度の2乗 × CD値(空気抵抗係数)
ところがそうでもないのです。
ルーフキャリアのバーがある事で、本来クルマの上部を綺麗に流れる筈の風が、大きく乱されるのです。
このため、CD値(空気抵抗係数)が一気に悪化し、空気抵抗が予想外に大きくなるのです。
生憎お見せできる様なデータが無いのですが、恐らく時速100kmの高速走行であれば、1~2割以上燃費が悪くなるのではないでしょうか?
ルーフキャリアですら燃費に影響するのですから、風洞実験もしていない後付けのリアウィング等でしたら、クルマの後ろにおもりを引きずって走っているのと同じ事です。
もし頻繁に高速道路を利用するのでれば、ルーフキャリア等は外しておくべきです。
加速抵抗
続いては、加速抵抗です。
加速抵抗と聞くとピンとこないと思いますが、スピードを上げる場合の抵抗(力)を指します。
これにも2種類あって、1点目はエンジンや変速機やシャフト等の摺動抵抗と、もう一つはクルマ自体の重量です。
BMWの3気筒1500ccエンジン内部
ですので、もしエンジンや変速機の摩擦を小さくすれば燃費は良くなりますし、クルマを軽くすれば更に燃費が良くなります。
当然ながら、クルマの重量が支配的なのですが、ここでは先ず摺動部抵抗の抑え方についてお伝えしたいと思います。
エンジンオイルを粘度の低い物に変える
燃費性能を上げるため、クルマの技術はどんどん進化してきましたが、使用されるエンジンオイルの種類も変わってきているのをのをご存知でしょうか?
1缶(4L)千円前後から果ては何と1万円近い物まであるエンジンオイル
一昔前でしたら、10W-30(-20℃に対応の粘度レベル30)程度のオイルが一般的だったのですが、最近のクルマは0W-20 (-30℃に対応の粘度レベル20)と粘度が一段低いオイルが一般的(標準)になってきました。
JAMA(日本自動車工業会)の調べによれば、2011 年末の時点で新車出荷時に0W-20 を採用した車両の新車販売台数比率は約97%、0W-20 で出荷された保有車両比率も50%を超えたと推定されるとの事です。
これが何を意味しているかと言えば、燃費を良くするために、多くのクルマメーカーにおいては、粘度の低いエンジンオイルを標準として採用してきているという事です。
すなわち、これほどエンジンオイルの粘度は燃費に影響するという事です。
ですので、本来エンジンオイルは取扱説明書に記載された粘度の物を使うべきなのですが、例えば寒冷地でエンジンが冷えた状態で乗る場合が多いのでしたら、指定のエンジンオイルより少し柔らかめ(粘度の低い)のオイルを使うと確実に燃費が良くなります。
ただし、そのまま夏場の暑い時期に乗り回すと、摺動部摩耗の原因になりますのでご注意を。
燃料を満タンにしないとどれくらい省エネになるのか?
次なる燃費対策は、言わずと知れた車両重量の軽減策です。
これはただただ不用品をクルマに積まないだけの話なのですが、問題は燃料を満タンにするかどうかです。
はたして満タンにしないというのは、どれだけの効果があるのでしょうか?
となると、先ず知りたいのは燃料の重さです。
燃料タンクの容量は、一般的な軽自動車で30リッター前後、普通乗用車で60リッター前後でしょうか。
燃料の比重が0.75ですので、30リッターで重さは23kg、60リッターで45kgです。
仮に満タンにしないでタンクの半分だけ燃料を入れたとすると、軽減効果はそれぞれ11kgと23kgです。
車両重量が軽自動車で800kg、普通乗車で1600kgだとすると、車両重量に対する軽量効果はたったの1.3%でしかありません。
理論上、これが燃料を半分しか入れなかった場合の燃費改善効果になります。
すなわち、もし燃料代が1万円掛かったとすると、これによって130円(1.3%)安くなるという訳です。
この130円のために、燃料スタンドに2倍多く行くかと訊かれれば、行かないと思う方が大半ではないでしょうか?
ころがり抵抗
ころがり抵抗を抑える手は、二つしかないと言っても良いでしょう。
一つはタイヤの空気圧を上げる、もう一つはタイヤを省エネタイヤに交換する事です。
タイヤの空気圧を上げる
先ずやるべきは、タイヤの空気圧を上げる事でしょう。
初期の空気圧次第なのですが、場合によっては1割から2割程度燃費が良くなります。
ただし空気圧を上げると、明らかに乗り心地が悪化しますしので、常時タイヤの空気圧を高めるのはお勧めしません。
このため本書としては、高速道路(一般道と比べて比較的な平坦)を使って少し遠出する際に、空気を補充するのをお勧めします。
また空気圧を上げ過ぎると、タイヤの中央部だけが偏摩耗したりします。
ですので、規格以上の過度な空気圧もお勧めできません。
エコタイヤに変える
そしてもう一つの手が、タイヤをエコタイヤに交換する手ですが、これは全くお勧めしません。
何故ならば、エコタイヤは普通のタイヤよりかなり高いのです。
下はいずれも185/65R15のエコタイヤでが、普通のタイヤでしたら3千円程度で買えるのに、6千円以上もします。
ですので、多少燃費が良くなっても、タイヤを4本交換した途端にその浮いたお金は消え失せてしまうのです。
おまけにエコタイヤは乗り心地も悪くなりますので、メリットは何も無いと言って良いほどです。(詳細はこちらに)
その他
今まではクルマが走行時に受ける抵抗を減らす事に主題を置いて述べてきましたが、乗り方の違いでも省エネになりますので、ついでにそれもご紹介しておきたいと思います。
ブレーキを極力踏まない
その一つは、ブレーキを極力踏まない事です。
ネットには同じ様な事として、エンジンブレーキを多用すると書かれていますが、これは不正確と言うより、間違いと言った方が良いかもしれません。
何故ならば、エンジンブレーキを使うという事は、(燃料は消費していなくても)運動エネルギーをエンジン内のピストンを上下させる事で、熱に変えて大気に放出しているからです。
ですので、エンジンブレーキを使うという事は、(ブレーキパッドは減りませんが)ブレーキを軽く踏んで走っているのと全く同じ事なのです。
もしクルマの運動エネルギーを完璧に使い切るには、ギアをニュートラルにして、ブレーキを一切踏まない事です。
ただしそれでは運転し難いので、ギアはそのままで、極力ブレーキを踏まない事が大切です。