(常識を覆す速度と燃費の関係
速く走った方が間違いなく燃費は良くなる

2016/05:発行
2020/01/12: 全面改訂

目次



1. はじめに


早速ですがいつもの様に問題です。

クルマを速く走らせると、燃費は悪くなるのでしょうか?

これでは少々曖昧なのでもう少し具体的に言うと、時速40kmで走るのと、時速80kmで走るのとでは、燃費はどれくらい違うのでしょうか?

常識的に考えれば、速度が2倍になれば燃費も2倍悪くになる様に思ってしまいますが、本当にそうでしょうか?

以前は各社から時速60kmの定地走行燃費等が公表されていたのですが、今ではWLTCモードとかJC08モードといった実使用を想定した燃費(燃料消費率)しか表示されないため、手軽に確認する術(すべ)がありません。

という訳で、本サイトならではの手法を使って、この謎に迫ってみたいと思います。

常識を覆す様な驚きの結末が控えていますので、是非最後までお付き合い頂ければと思います。


2. 燃料消費量は馬力に比例する


それでは先最初に、クルマの燃料消費量を調べる方法を考えてみたいと思います。

一番正確なのは、エンジンのシリンダーに噴射される燃料の量を測定するのが一番なのでしょうが、弱小サイトにそんな難しい事はできません。

また燃料噴射量はアクセルペダルの踏み量にも比例するでしょうが、ペダルの踏み込み量を調べるのもかなり大変です。

もっと簡単に燃料消費量を調べる手はないものでしょうか?

それでヒントになるのは、電気の使用量です。

例えば、構造が簡単な電気コンロにおける電気使用量は、定格銘版に書かれているヒーターの消費電力(ワット数)にその使用時間を掛ければ簡単に求める事ができます。


電気コンロの電気代は消費電力と使用時間から計算できる

だとすると、クルマにおいても消費電力に相当する値を調べて、それに使用時間を掛ければ燃料消費量が分かる筈です。

となると、下の表にあります様にクルマの消費電力に相当するのは馬力という事になります。

英語 日本語 意味 式(単位)
Force トルク
摩擦力
物を押す力 力(N)
Work 仕事 電力量
燃料消費量
仕事をした(物を動かした)能力 力×距離
(J)
Energy エネルギー 仕事をする(物を動かす)能力
Power パワー
仕事率
消費電力
馬力
単位時間に仕事をする能力 力×距離/時間
(W)

注:最近では馬力の事をエンジン出力と呼ぶのが一般的な様ですが、本書では昔ながら馬力を使用します事ご容赦願います。

馬力はその昔PSという単位を使って表示していましたが、今では国際単位に合わせて上の表にあります様に、消費電力と同じワット(W)で表示されいますので、両者は同じものと考えて良さそうです。

もう少しアカデミックに言えば、消費電力も馬力も同じパワー(仕事率)であり、パワーに使用時間を掛ければ仕事(エネルギー)が求められるという訳です。

話が長くなってしまいましたが、端的に言ってしまえば燃料消費量(エネルギー)は馬力(パワー)に比例するという事です。

ですので、もし同じクルマを50馬力で1時間走行した場合と、100馬力で1時間走行した場合を比べると、後者の方が2倍燃料を消費する事になります。

ここまではご異論はないでしょうか。


3. 時速40kmと時速80km走行時の馬力


それでは次に、燃料消費量を知る(比べる)ために、時速40kmと時速80kmで走行した場合の馬力を、走行性能曲線とエンジン性能曲線から求めてみたいと思います。

まず走行性能曲線を使って、時速40kmと時速80kmのエンジン回転数を求めます。

使用するは、以前弊サイトで作成したS660の走行性能曲線です。


S660の走行性能曲線

上の走行性能曲線において、横(X)軸の時速40kmと4速ギアの紺色の直線が交わった所がその速度におけるエンジン回転数になります。

S660においては、時速40kmで(僅かにズレがありあますが)ちょうど2000rpm、時速80kmで4000rpmになります。

次にこの時の馬力を、エンジン性能曲線から求めます。


S660のエンジン性能曲線

上のエンジン性能曲線をご覧頂きます様に2000rpmでの出力は21kWで、4000rpmの出力は42kWとちょうど2倍異なる事が分かります。

これは馬力のカーブが5000回転辺りまでほぼリニア(直線)になっているからで、大多数のクルマにおいて似た様な傾向になります。

すなわち、2倍速く走れば2倍燃料を多く消費する、と言えます。

と言いたい所ですが、生憎それは間違いです。


4. 速度が2倍になっても燃料は2倍に増えない


何が間違いかと言いますと、前項では時速40kmも80kmも同じ4速変速ギアを使用していました。

ですが、時速80kmでしたら5速(無理すれば6速)も使えます。

その場合の馬力を、先ほどと同じ様に求めて表にすると、以下の様になります。

変速ギア\速度 時速40km 時速80km
4速 21kW 42kW
5速 (14kW) 33kW
6速 (26kW)
時速40kmと80kmで走る場合に必要な馬力

この表をご覧頂きます様に、時速40kmの馬力が21kW だったのに対して、5速を使用した時速80kmの馬力は33kW ですので、速度が2倍になっても燃料消費量は1.6倍で、単純に2倍にはなりません。

とは言え、この場合でも時速80kmの燃料消費量は時速40kmより増えるので、速度を上げた方が燃費が悪くなるのは間違いありません。

と言いたい所ですが、残念ながらそれも間違いです。


5. 燃費はなるべく速く走った方が良い


なぜ”速度を上げた方が燃費が悪くなる”、と言うのは間違いなのでしょうか?

確かに、速度を上げた方が燃料を多く消費するのは間違いありません。

ですが、燃費となると燃料消費量を走行距離で割らなければならなりません。

となると、当然ながら時速80kmで走った方が時速40kmで走った場合より、距離が2倍長くなります。

ですので、燃費の指標として馬力を比較するのでしたら、先ほどの表の時速80kmの馬力を2で割ってやる必要があります。

という訳で、手っ取り早く先ほどの表の時速80kmの馬力を2で割って、矛盾が生じたワットの単位を削除して、旧馬力を燃費指数と命名したのが以下の表です。

変速ギア\速度 時速40km 時速80km
4速 21 21
5速 (14) 17
6速 (13)
時速40kmと80kmで走った場合の燃費指数

この表の場合、(単位が無くなってしまいましたが)数値が小さいほど燃費が良い事を表しています。

これをご覧頂きます様に、同じ4速の変速ギアを使った場合の燃費は、時速40kmも時速80kmも同じになります。

この事は後ほどまた出てきますので、頭の隅に残しておいて下さい。

そして、時速80kmで5速を使った場合は、時速40kmより燃費が2割も良くなるのです。

ですので燃費を良くするには、(適度にストアップして)なるべく速く走った方が良いのです。

これは、かなりビックリする様な事実ではないでしょうか?

ただし、余りにスピードを上げると、風の抵抗が強くなり逆に燃費が悪くなる事が予想されます。




6. 時速何kmで走るのが一番燃費が良いのか?


風の影響を考えると、だったら時速何kmくらいで走るのが一番燃費が良いのか知りたくなる事でしょう。

また今までの幣主張が正しいかどうか、裏付けとなる資料もほしいものです。

長いクルマの歴史ですので、当然ながらそれに類する資料は、既に存在しているのです。

だったら先にそれを見せろと怒られそうですが、これをいきなりお見せしたら、俄かに信じられないのではないでしょうか。

もったいぶってしまいましたたが、その資料が下にあります(財)日本自動車研究所が作成した平均車速と燃費に関するチャートです。


縦(Y)軸が時速40kmの燃費を100とした燃費指数になっているのでピンと来ないかもしれませんが、これを解説すると、仮に時速40kmでの燃費がリッター当たり20kmだとすると、時速20kmで走行するとリッター当たり14km(=20km×70%)に、燃費がダウンする事を表しているのです。

更に、時速5kmで走行すると燃費はたったのリッター当たり6kmにまで落ち込んでしまうのです。

これを視覚に焼き付けて頂くために横棒グラフにすると、以下の様になります。


速度と燃費の関係(低速走行すればするほど燃費は悪化する)

そして時速70kmで走行すると、何とリッター当たり24kmと(時速40km走行に対して)燃費が20%も向上すると言っているのです。

ちなみにこのチャートにおける時速40kmと時速80kmの燃費の比率は1:1.15で、前述した本書が求めた1:1.2とかなり似た値になっています。

多少の誤差はあるものの、速度を上げた方が燃費が良くなるというのは、異なるデータによってこれで裏付けらえたと思って良いのではないでしょうか。

いずれにしろ、風の抵抗を考慮しても、時速70kmまではとにかく速度を上げた方が燃費が良くなるのは間違いなさそうです。

と言う事は、目的地に早く着いて、更に燃料費は安く済むのです。

これはすなわち、目的地に早く着くために特急列車に乗ったら、鈍行列車より料金が安く済んだ様なもので、一般常識に逆行するとんでもない暴挙なのです。

いきなりこのチャートだけ見せられたら、俄かに信じられないでしょうと言った理由はご納得頂ける事でしょう。

ですが、今までの話を聞かれれば、これはどうやら本当らしいと思って頂けると思います。


7. クルマは時速80km近辺で走行するのが一番燃費が良い


ところで本書をお読み頂いている方でしたら、今までに1度くらい以下の様な話を耳にした事があるのではないでしょうか?

クルマは時速70~80km近辺で走行するのが一番燃費が良い

だとしても、これを以下の様に解釈された方が、多いのではないでしょうか?

高速道路では、時速100kmより速度を抑えた時速70~80km近辺で走行する方が燃費は良くなるのだろう。

ただし一般道では時速70~80kmでは走行できないので、これは高速道路だけで通用する話だろう。

或いは、

時速70~80kmで燃費が良いのは、内燃機関の場合4000回転付近で熱効率が最大になるからであろう。

一般道では4000回転を使うのは稀であるので、これは一般道には当てはまらないのだろう。

ところが、この話は高速道路だけではなく、一般道でも通じる話だったのです。

すなわち、この話は間違いではないものの、言葉足らずだったのです。

これを誤解のない様に言えば、以下の様になります。

クルマは時速70~80kmまでは、低速より高速で走行した方が確実に燃費が向上する。
また時速70~80kmを超える場合は、低速の方が燃費が向上する。

ご納得頂けますでしょうか。


8. 電気自動車の場合


ここまでお話すると、ならば電気動車はどうなのかと思われる事でしょう。


三菱の電気自動車のi-MiEV

下の図は三菱の小型電気自動車i-MiEVのトルク特性ですが、内燃エンジンと異なり初期トルクが非常に高いまま暫く一定で、途中から徐々に下がっていきます。


i-MiEVのトルク特性(発進時でもトルクが大きいので変速ギアを必要としない)

この様な特性の電気自動車において、内燃機関のエンジン搭載車と同じ様な事が言えるのでしょうか?

すなわち、電気自動車も時速70km付近に燃費のピークがあるのでしょうか?

何とその答も既に(財)日本自動車研究所の資料にあります。


電気自動車における速度と燃費の関係

上のチャートは当該研究所が作成した資料からの抜粋で、ある電気自動車(明記されていませんが仕様から言って三菱のi-MiEV)における速度と燃費(正確には電費)の関係を示しています。

ただしこのチャートにおける燃費は、1km走行するのに必要な電力量(Wh)を示していますので、数字が小さい程燃費が良い事になります。

それを知った上でこのチャートを見ると、電気自動車の場合、時速40kmまでは燃費は殆ど変わらず、時速50kmを超える辺りから徐々に燃費が悪くなる傾向が見られます。

注:時速30kmに僅かに燃費のピークが見られますが、これは時速20km以下の低速走行ではモーターインバーターの変換効率が低下するためです。

なぜエンジン搭載車の様に、燃費が良くなるピークが見られないのでしょうか?

何か特別な理由があるのでしょうか?

そこで思い出して頂きたいのが、エンジン搭載車において、変速ギアが一定のとき燃費はどうだったかです。

下にまた先ほどの表を添付しますが、変速ギアが同じであれば、燃費指数は時速40kmでも80kmでも同じでした。

変速ギア\速度 時速40km 時速80km
4速 21 21
5速 (14) 17
6速 (13)
時速40kmと80kmで走った場合の燃費指数

ご存知かもしれませんが、電気自動車の場合、大きなトルクを必要とする発進時でもトルクが大きいし、後退もモーターの極性を変えるだけで良いので、変速ギアが存在しないのです。

すなわち電気自動車は、速度が異なっても常に同じ変速ギアを使って動いている事から、速く走っても遅く走っても燃費は一定なのです。

ただし高速になると、エンジン搭載車と同じ様に空気抵抗が徐々に大きくなるため、燃費も徐々に低下していくという訳です。

本項のまとめてとしては、電気自動車の燃費は、時速40kmまではほぼ一定で、それを過ぎると徐々に悪化してくるとしたいと思います。

ですので電気自動車の場合、(エンジン搭載車と異なり)常に速度を抑え気味にした方が燃費が良いと言えます。


9. まとめ


これで速度と燃費の関係をしっかり理解して頂いたのではないでしょうか。

それではまとめです。

①同じ変速ギアで走る限り、速度が上がればそれに比例して燃料消費量は増えるものの、走行距離も速度に比例して増えるため燃費に差はない。

②ただし(速度が上がるのに伴って)変速ギアを適切にシフトアップしていく事で、燃料消費量は低下するので燃費も000+0.良くなる。

③すなわち、常識的に考えれば速度が遅いほど燃費が良くなると考えてしまうが、実際は速度が遅い程燃費は悪くなる。

④例えば時速40kmと比べると、時速10kmで走ると燃費は50%に低下し、時速5kmでは65%も悪化する。

⑤燃費が一番良いのは、時速70km前後で走行するときである。

⑥このため最高速度が時速60km以下の一般道では、なるべく速く走った方が燃費は良くなる。

⑦理想を言えば、発進時はノンビリ加速し、次の信号で止まるくらいで前車に追い付くのがベストである。

⑧また高速道路では、なるべく低速で走った方が燃費は良くなる。

⑨このため高速道路ではなるべく左車線をキープすると共に、登板車線のある坂道では、極力トラックの後について登板車線を低速(時速70km前後)で走った方が得策である。

⑩電気自動車の場合は、変速ギアが無いため、常に速度は抑え気味にした方が燃費は良い。


いかがでしたでしょうか?

燃費向上のために明日からスピードを出して運転しろとは言いませんが、もし燃費向上のために故意にのんびり運転しているのでしたら、ギアを一段上げてさっさと走った方が良いかもしれません。




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