グリップ力で見た
雪道に強い4輪駆動車のランキング

2016/11/18: Issued
2019/08/18: Reviced

目次





はじめに


さて前記事(雪道に強いクルマとは)で、雪道に強いクルマを完全にご理解頂いた所で、具体的に雪道に強い4輪駆動車をご紹介したいと思います。

ネットで”雪道に強い車”で検索すると、色々な4輪駆動車を順位付けしたサイトがヒットします。

グーグル検索でトップに出たサイト(https://jidoshafan.com/21.html)の順位は以下の様になっていました。

1位
スバル・レガシー・アウトバック
2位
スバル・フォレスター
3位
スズキ・ジムニー
4位
トヨタ・ランドクルーザー
5位
三菱・パジェロ

いずれも4輪駆動車として良く知られた車種ばかりで、それにもっともらしい理由を付けて順位付けしてありますが本当にそうなのでしょうか?

ロジックを優先する本サイトとしては、懐疑的になるしかありません。

なぜならばこの順位付けに、何一つ定量的な比較が行われていないからです。

ならば常に数値で比較したくなる本サイトが、順位付けしたらどうなるかお知らせしたいと思います。

かなりびっくりする結果になりますので、楽しみにしておいて下さい。


2. 雪道に強い4輪駆動車とは


前述の5台は、いずれもエンジンがフロントにある4輪駆動車ですので、走る/止まる/曲がるの基本性能については殆ど差は無いと言えます。

確かに細かく見ると、四輪駆動の切り替え方法や制御方法が微妙に異なるのですが、ジムニー以外はフルタイム4WDですし、ジムニーも雪道ではセンターデフの無い4輪駆動車ですので、物理的な特性はどれもほぼ同じと言えます。(4輪駆動システムの比較についてはこちらへ)



フォレスターの4輪駆動に関する表示

ただし、そう言ってしまうと身も蓋もない(順位付けできない)ので、ここでは雪道に強い4輪駆動車についてもう少し単純にランク付けしてみたいと思います。

今まで本書を読んで頂いた方でしたら既にご理解頂いていると思いますが、雪道に強いクルマとは、エンジンレイアウトと駆動方式が同じであれば、重くて/タイヤが細くて(接地面積が小さくて)/最低地上高の高いクルマです。

実際一人乗車ではどうしても登れなかった雪の積もった坂道を、家族を乗せた途端にガンガン登れる様になったのを経験した方も多いと思います。

なお今どきの4輪駆動車でしたらアンチロックブレーキやトラクションコントロールが付いているのは当たり前なので、それについてはここでは割愛します。

という訳で、前述の5台の中で、先ずはタイヤの接地面積当たりの荷重の大きなクルマはどれかを調べてみたいと思います。


3. 接地面積の大きな4輪駆動車


とは言いながら、各タイヤにおける接地面積を正確に求めるのは容易な事ではありません。

ですが、本サイトでは難しい事をいとも容易(たやす)くやってのけます。

当然ながら小さなタイヤと大きなタイヤの接地面積を比べれば、大きなタイヤの接地面積が大きくなるのは誰もが容易に想像できると思います。


そして、接地面積はタイヤの幅と接地長さを掛ければ求められます。

タイヤの幅はサイズ表から分かりますが、接地長さは不明です。

だったら接地長さは、タイヤの中心からの角度10度の弦の長さと仮定して計算しようという訳です。

ちなみに弦の長さは以下の式から求められます。

弦の長さ=直径×sin (角度/2)

ですので、ランドクルーザの場合、タイヤの直径が793mmなので、接地長さは以下の様になります。

接地長さ =793mmxsin 5°
=793mm x 0.087
=69mm

この10度の弦の長さが正確かどうかは甚だ疑問なのですが、あくまでも比較用と割り切ればそれほど大きな間違いとは言えないだろうという訳です。

実際この値を5度にしても15度にしても、当然ながら値は変わるものの、順位は殆ど変わりません。

さて、それから求めた(相対的な)接地面積は、以下の様になります。

順位 車種\項目 重さ
(kg)
タイヤサイズ タイヤ直径
(mm)
タイヤ幅
(mm)
接地長さ
(mm)
接地面積
(cm² )
1
ランドクルーザ
2690 285/ 50R20 793 285 69 197
2
パジェロ
2290 265/ 65R17 776 265 68 179
3
CX-5
1650 225/ 65R17 724 225 63 142
4
アウトバック
1570 225/ 65R17 724 225 63 142
5
エクストレイル
1500 225/ 65R17 724 225 63 142
6
フォレスター
1510 225/ 60R17 701 225 61 137
7
ジムニー
990 175/ 80R16 686 175 60 105

当然ながら、大きなタイヤを履いているランドクルーザが一番大きく、軽自動車のジムニーが一番小さくなります。

なお上の表では、ついでにマツダのCX-5と日産のエクストレイルも追加しておきました。


4. 接地荷重の大きな4輪駆動車


では次に、接地荷重の大きな4輪駆動車を調べてみましょう。

本書で言う所の接地荷重とは、単位面積当たりの荷重の事で、クルマの重さをタイヤの接地面積で割ったものです。(正確には接地圧力と呼ぶべきかもしれませんが、ここでは分かり易く接地荷重と呼ぶ事にします)

この値が大きいほどタイヤは雪に食い込み、走破性が高まります。

以前お伝えした標準タイヤより、細いテンパータイヤの方が雪道での走破性が高まるのと同じ理由です。

接地荷重が大きい順番に並べると、どうなるでしょうか?


順位 車種\項目 重さ
(kg)
タイヤサイズ タイヤ直径
(mm)
タイヤ幅
(mm)
接地荷重
(g/ mm2)
1
ランドクルーザ
2690 285/ 50R20 793 285 137
2
パジェロ
2290 265/ 65R17 776 265 128
3
CX-5
1650 225/ 65R17 724 225 116
4
アウトバック
1570 225/ 65R17 724 225 111
5
フォレスター
1510 225/ 60R17 225 704 110
6
エクストレイル
1500 225/ 65R17 724 225 106
7
ジムニー
990 175/ 80R16 175 686 95

いかがでしょうか?

上の表をご覧頂きます様に、接地荷重の順番も重さ順番と完全に一致していますので、結局の所重いクルマ(大柄なクルマ)ほど雪道の走破性は高いと言えます。

前述しました人気サイトの順位とは全く異なりますが、こちらの方が余程理に叶った順位ではないでしょうか?

なおジムニーが最下位になっているのを不思議に思われるかもしれませんが、タイヤの接地荷重も小さい上に、左右輪の間もオープンデフのままですので、4WDとしては雪道にめっぽう弱いクルマなのです。


ジムニーのタイヤは太くて大きい

もっとはっきり言いましょう。

ジムニーが雪道に強いというのは、全くの迷信です。


5. 最低地上高の高い4輪駆動車


さらにこれに最低地上高のデータを加えてみましょう。


順位 車種\項目 重さ
(kg)
タイヤサイズ タイヤ直径
(mm)
タイヤ幅
(mm)
接地荷重
(g/ mm2)
最低地上高
(mm)
1
ランドクルーザ
2690 285/ 50R20 793 285 137 225
2
パジェロ
2290 265/ 65R17 776 265 128 225
3
CX-5
1650 225/ 65R17 724 225 116 210
4
アウトバック
1570 225/ 65R17 724 225 111 200
5
フォレスター
1510 225/ 60R17 704 225 110 220
6
エクストレイル
1500 225/ 65R17 724 225 106 205
7
ジムニー
990 175/ 80R16 686 175 95 200

すると、多少例外(フォレスターとエクストレイル)もありますが、それ以外は接地荷重の順番と同じ順番で最低地上高も高くなりました。

これは大きなタイヤを履いているクルマほど、最低地上高は高くなるので、当然と言えば当然の結果なのですが、大きくて重いクルマほど、いずれの点においても雪道には強いと言えます。

数値で見れば、正確に雪道に強いクルマが分かります。

非常に無難な結論に落ち着いたので、これでメデタシメデタシとしたい所ですが、実は本書の話はこれで終わりではありません。

それでは次に、衝撃的な事実をお伝えしましょう。

これこそが本書がお伝えしたかった事なのです。


6. 街乗り車ベースの4輪駆動車はどうなのか?


この5台の中に、雪道にはそれほど強くはないだろうなと誰もが思うであろう、ミニバンの代表格であるトヨタのノア、大衆車の代表としてカローラ、軽自動車の代表としてワゴンRハスラーの4WDモデルを加えてみましょう。

この4台を前述の表に加えると、どうなるでしょうか?

ジャジャーン! それが下の表になります。

順位 車種\項目 重さ
(kg)
タイヤサイズ タイヤ直径
(mm)
タイヤ幅
(mm)
接地荷重
(g/ mm2)
最低地上高
(mm)
1
ノア4WD
1680 205/ 60R16 652 205 144 155
2
ランドクルーザ
2690 285/ 50R20 793 285 137 225
3
パジェロ
2290 265/ 65R17 776 265 128 225
4
カローラ4WD
1180 175/ 65R15 608 175 127 135
5
CX-5
1650 225/ 65R17 724 225 116 210
6
ワゴンR4WD
840 155/ 65R14 557 155 112 150
7
アウトバック
1570 225/ 65R17 724 225 111 200
8
フォレスター
1510 225/ 60R17 701 225 110 220
9
エクストレイル
1500 225/ 65R17 724 225 106 205
10
ハスラー4WD
870 155/ 60R15 579 165 104 175
11
ジムニー
990 175/ 80R16 686 175 95 200

いかがでしょう。

かなり驚くべき結果ではないでしょうか。

な何と、ノア4WDの単位面積当たりの接地荷重は、1トン以上も重いランドクルーザーより上なのです。

またカローラ4WDの接地荷重は、同じく1トン以上も重いパジェロと同等で、ワゴンRの4WDに至っては600kg以上も重いフォレスターやアウトバックより上なのです

そして一見雪道に強そうに見えるSUV風のハスラー4WDは、実はワゴンRの4WDより劣っているのです。

この理由は、クロカン4WDやSUVは最低地上高を稼ぐのと、見かけの押し出し感を強めるために、大き目のタイヤを履いているのに対して、街乗りベースの4輪駆動車は、元々乗降性や経済性を考慮して必要最少限の大きさのタイヤを履いているからと言えます。

ですので、10cm以上も積もった除雪されていない新雪の上を頻繁に走るのでなければ、街乗りベース車の4輪駆動車の方が、大きなタイヤを履いたクロカン4WDやSUVより、雪道の走破性は断然高いのです。

文章が長くなったので、もう一度言います。

除雪された雪道の走破性は、高いクロカン4WDやSUVより、安い街乗り4WDの方が上なのです。

びっくりする様な結果だと思うのですが、そして更に重要な事があります。


7. 接地荷重の大きな4WDの知られざる優位性


4WDは雪道において、走る/曲がる/止まるの3拍子において他の駆動方式より優れていると思われていないでしょうか?

ところが、4WDの優位性は走るの走行性能だけで、曲がる/止まるについては他の駆動方式と同じなのです。

むしろ曲がるについては4輪が駆動する分、実は曲がり難いし、止まるに関しても、4輪が全て繋がっているので、全輪が一気にロックするという危険性をはらんでいるのです。

ところが接地荷重が大きいという事は、雪道でタイヤのグリップが良いという事になりますので、走る/曲がる/止まるの全てにおいて効果があるという訳です。

ですので走行時はしっかり雪の路面に喰い付いて走り、曲がるときもアンダーにもオーバーにもならず、ブレーキにおいても最短距離で停止できるという訳です。

こんな事はご存じだったでしょうか?


8. まとめ


以上をまとめますと、以下の様になります。

①クロカン4WD、あるいはSUVについては、大きくて重いクルマほど雪道には強い。

②ただし最低地上高は低いものの、街乗り車ベースの4WDモデルの雪道の走破性は、小さなタイヤを履いている分、クロカン4WDやSUVよりも断然高い。


③4WDが機構上優れるのは走行性能だけだが、街乗り車ベースの4WDモデルは、旋回性能とブレーキ性能においても優位性がある。



これで雪道に強いクルマの傾向が分かった所で、最後に本書独自の(少々マニアックな)雪道でお勧めのクルマ3台ご紹介したいと思います。

何だと思われるでしょうか?

全く予想外のクルマが飛び出してきますので、是非次も覗いてみて下さい。




グリップ力で見た雪道に強い4輪駆動車のランキング




ご意見、ご感想等ありましたら是非こちらに。
Your response would be highly appreciated.





ホーム頁へ戻る

サイト紹介

クルマやバイクに関連する話を、論理的に且つ分かり易くお伝えする様に努力しています。

本紙独自の話が満載ですので、もし宜しければ珈琲でも飲みながらお楽しみ下さい 。

なお本サイトのPrivacy Policyはこちらです。

▼ 1. Torque and Horse Power
2. Automobile
3. Wheel Alignment
4. Tire
5. Bike
6. 4WD