新型トヨタクラウンの遠慮深謀

2022/07/21: 発行

目次



1. はじめに


これは驚きました。

高級セダンの代名詞とも言えるクラウンが、大きく変貌を遂げました。

と言うより、名前はクラウンなれど、全く別の車種になったと言う方が適切かもしれません。

そしてこれは、とんでもなく売れまくるのは間違いないでしょう。

なぜそう言えるかについて、これからじっくりお話させて下さい。

2. 4車種のサイズ


既にご存知でしょうが、先ずは新型クラウンの4車種についてご紹介しましょう。


上の写真の手前から、クロスオーバー、スポーツ、セダン、ワゴンです。

それだけですと、今一つサイズ感が掴めないので、それぞれの寸法を比べた表が以下になります。

車種\サイズ 全長 全幅 全高 WB
クロスオーバー 4930 1840 1540 2850
スポーツ 4910 1800 1455 2770
セダン 5030 1890 1470 3000
ワゴン 4930 1880 1620 2850
現行クラウン 4895 1800 1475 2850

これをご覧頂きます様に新型クラウンの4車種は、当然ながら現行クラウン並みかそれ以上に長くてワイドなのです。

と言う事は、トヨタの最上位機種が一気に4車種も登場したのですから、他社はかなり脅威ではないでしょうか。

細かくディメンションを見てみると、一番長くて幅広なのはセダン一番背が高いのがワゴン一番背が低いのがスポーツで、全てにおいて中庸なのがクロスオーバーです。

またクロスオーバーとエステートのホィールベースが、現行クラウンと同じである事を考えると、プラットフォームは現行クラウンの流用なのかもしれません。

そうなると、開発着手から2年と数か月で発売まで漕ぎつけた理由も、何となく頷けます。

またもう一つ見逃してはならないのは、標準のプラットフォームに対してスポーツはホイールベースを縮め、セダンは延ばしている事です。

トヨタ以外では、ここまでやる事は決してないでしょう。

これを知っただけで、さすがトヨタと思ってしまいます。

3. 駆動系


従来は後輪駆動と四輪駆動があったのですが、新型クラウンは全て後輪をモーターで起動する四輪駆動車になりました。

余談になりますが、駆動系の摩擦抵抗、あるいはタイヤサイズの変化によるセンターデフの負荷等を考えると、この後輪をモーターで駆動する方式が一番理想的な四輪駆動方式の様に思います。

またエンジンは、4気筒2.5Lと4気筒2.4Lターボの2種類で、いずれも当然ながらハイブリット方式です。

そこまで分かった所で、各車種を個々に見ていきたいと思います。


4. CROWN CROSSOVER(クロスオーバー)


先ずは新型クラウンの大本命とも言えるクロスオーバーです。


CROWN CROSSOVER(L:4930×W:1840×H:1540mm、WB:2850mm

クロスオーバーとは、セダンとSUVの中間に位置するセグメントで、今時セダンじゃ野暮ったいし、かと言ってSUVではデカくて燃費が悪いと思われる方にはピッタリではないでしょうか。

クロスオーバーと聞いて思い出すのが、スカイラインのクロスオーバーです


スカイラインのクロスオーバー(L:4635×W:1800×H:1575mm、WB: 2800mm)

これと比べると、クラウンの方が少々アクが強い顔立ちですが、全体のプロポーションとしてはこちらの方が万人受けするデザインの様に思われます。


その他のライバル車は、競合ひしめく国内外のSUVになるのでしょうが、それらより多少背が低いのが特徴と言えます。


BMW X6(L:4955 x W:2020 x H:1695mm、WB:2975mm)

また昨今の円安によって、価格もかなり抑える事ができますので、トヨタの最高級SUVとして売り出せば、かなり売れるのは間違いないでしょう。


5. CROWN SPORT(スポーツ)


続いてはクラウン スポーツです。


CROWN SPORT(4910×1800×1455mm、WB:2770mm)

一見すると、これはどう見てもクラウンという名のハリアーではないかと思ったのですが、全く違いました。


4代目ハリアー(L:4740 x W:1855 x H:1660mm、WB:2690mm)

ハリアーとサイズを比べてみると、全長はクラウン スポーツの方が170mmも長く、全高は205mmも低くいのです。

にも関わらずハリアーに似たプロポーション見えるのは、やはり21インチの大径タイヤ(直径70cm)を履いているせいなのでしょうか。(一般的にはせいぜい19インチ(66cm))

またこの大径タイヤに伴って、荒れた路面では乗り心地が良くなるのは間違いありません。

さらに前面の顔も、クロスオーバーほどアクが強くなく、クラウンという名のスポーティーカーという事で、日本ではこちらの方が売れるかもしれません。


派手なレッドのテーマカラーも、年配者の心をくすぐりそうです。


6. CROWN SEDAN(セダン)


続いては、クラウンの源流であるセダンですが、これはLexus ESにかなり似ています。


CROWN SEDAN(L:5030×W:1890×H:1470mm、WB:3000mm)


Lexus ES(L:4,975 x W:1,865 x H:1,455 mm、WB:3,125mm)

ご存知の様にLexusのアイデンティティーは、フロントのスピンドルグリルが有名ですが、これは途中(2012年のレクサスGS)から採用され、初代から引き継がれている特徴は、窓枠の後端が跳ね上がっている事です。

そんな訳で、Lexusでは決してできない窓枠後端を思いっきり鋭角にしてショルダーラインに繋げ、水平ラインを強調したスタイルにしたのが、新型クラウンのセダンといった所でしょうか。


7. CROWN ESTATE(エステート/ワゴン)


最後はワゴンです。


CROWN ESTATE(L:4930 × W:1880 × H:1620mm、WB:2850mm)

かってクラウンのワゴンと言えば、中小企業の社長さんが部品や工具を乗せて得意先回りに使用したクルマのイメージだったのですが、今ではその面影はありません。

早い話がクロスオーバーの荷室を、30cmも延長したのがワゴンです。

多用途に使うのであれば、これはかなり魅力的です。


8. トヨタの凄さ


こう見ていくとこのクラウン軍団は、トヨタの最上位車種であり、トヨタ車とLexusの間を埋める今時の売れ筋車種という事になります。

それだけでも話題性は十分なのに、これに日本では誰もが知るクラウンというブランド名が付くのですから、売れない訳がありません。

そして更に神風が吹くのです。

それは既にお伝えした昨今の円安です。

現時点で1ドル140円に迫る勢いですので、このクラウン軍団が海外に打って出るには、まさに絶妙なタイミングではないでしょうか。

おまけに今まででしたら、円安時にこんなクルマを北米に輸出したら、それこそ袋叩きに合いそうなものですが、米国は今回の円安を地政学上の理由から容認する構えの様です。

そうなると、果たしてこれは偶然なのでしょうか?

フランス哲学者であるデカルトに傾倒する弊サイトとしては、トヨタはこの円安を予想していたのではないかと思うのですが、いかがでしょう?

よもやそんな事は無いとは思うのですが、もし薄々予想していたとすると、トヨタは凄すぎます。



新型トヨタクラウンの遠慮深謀





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