小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)

2010/01: 発行
2016/06: 追記

第7章:トルクに関する誤解
(4気筒と6気筒エンジンではどちらが優れているのか?)



7-1. 燃費におけるトルクの重要性


運転におけるトルクの重要性は分かって頂いたと思いますので、ついでに燃費についてもお話ししておきます。

先ずは問題です。

高速道路を時速100kmで走り続けた場合、2000ccと3000ccの同車種のクルマでは、どちらの方が燃費が良いでしょうか?

多分殆どの方が2000ccだと思われるでしょうが、実は3000ccなのです。

実際、過去フェアレディZに同じボディーで2000ccと3000ccがあったのですが、高速クルージングを行うと、明らかに3000ccの方が燃費が良かったのです


フェアレディZ(3代目Z31型)

理由は簡単で、大排気量の方がトルクが大きいので、比較的負荷の少ない100km巡航時においてエンジン回転数を低くできる(燃焼効率の良い領域を長く使える)からです。

また回転数が低いという事は、当然ながら静粛性も高いという事になります。

ただし市街地での一般的な走行においては、負荷の大きな加減速の繰り返し(アクセルとブレーキを踏む機会)が多いため、やはり排気量が大きい方が燃費が悪くなるのは、ご存知の通りです。

なお同じ排気量のエンジンであれば、高トルクタイプの方が回転数を抑えられるので、高速道でも一般道でも当然燃費は良くなります。




7-2. 4気筒エンジンと6気筒エンジン


それでは次の問題です。

同じ車体に、同じ排気量の4気筒と6気筒エンジンを積んだクルマが2台ありました。

さて、どちらが速いでしょうか?

それは当然6気筒エンジンだと答えたら、残念間違いです。

通常同じ排気量のエンジンでしたら、1気筒当たりのシリンダー容量が大きくなる少気筒エンジンの方がトルクを大きくできるので、間違いなく4気筒エンジンのクルマの方が加速が良くなります

その理由につきましては、こちらをご覧ください。

確かに6気筒エンジンの方が回転が滑らかで早いイメージがありますが、最高速度も大差ありません。

実際一昔前にシルキーシックスとまで呼ばれたBMWの6気筒エンジンですが、2000ccクラスの最高出力は150PS/5,900rpm(1998~M52B型)でした。


6気筒エンジンを搭載したBMW 3 Series

ところが、同時期の4気筒エンジン(N42B20A型)も同じ150ps/6,200rpmだったのです。

一方トルクは、6気筒が19.4kgm/3,500rpmで、4気筒がそれより高い20.4kgm/3,750rpmでした。

よく自動車雑誌に4気筒モデルは軽快でキビキビしている、6気筒車は重厚で滑らかな加速とはなはだ観念的な表現していますが、この差は馬力ではなく車重(4気筒エンジンの方が軽い)が軽いのと、このトルクによるものです。

以前のエルグランドに2.5リットルの6気筒エンジンがありましたが、なぜか次期型ではアルファード同様2.5リットルの4気筒エンジンになりました。


この理由は簡単で、重い車体にも関わらずトルクの小さな6気筒を積んだため、満足に加速できなかったことは想像に難くありません。(おそらく多人数乗車時の上り坂では、登板車線以外は走れなかったのではないでしょうか)

また同一の軽自動車に4気筒エンジンと3気筒エンジンを積んだクルマがありますが、同様の理由で3気筒エンジンの方が軽快なのは間違いありません。

となると、一体多気筒エンジンのメリットは何なのでしょう?

確かに回転数を上げて馬力を上げ易いのですが、振動が少ないので、高速走行が滑らかだと思われたら、それも大間違いです。

先ほど理論的には6気筒の方が滑らかと書きましたが、あくまでも理論上の話で、実際に走っているクルマにおいては、積んでいるのが4気筒か6気筒エンジンかなど分かる人などいません

走行中の振動や騒音は、気筒数の違いより、むしろ路面からの振動や、タイヤ音、風切り音、遮音材によるものです。

実際、自称モータージャーナリストに数台クルマに乗って貰って、6気筒か4気筒かパネルテストをして貰えば、正確に言い当てる事など決してできません。

ただし3000cc以上で4気筒となると(その強大なトルクと排気音で)もしかしたら差が分かるかもしれませんが、その様なエンジンは非常に稀(ポルシェ944の最終モデルが4気筒3000ccでした)です。

では多気筒エンジンのメリットは何か言えば、高回転で馬力が稼げる事と、低回転時、特にアイドリング時のブルブル振動が少ない事なのです。

日常で使いきれない最高馬力と、停止中の振動を抑えるために、コストの掛る多気筒エンジンを選択するのは無駄としか言えません。

とういう訳で、2,500ccまででしたら、(妙な見栄さえなければ)迷わず4気筒エンジン、軽自動車でしたら3気筒エンジンが断然お勧めです。

長年バイクを乗り継いでいる方が、最終的に多気筒エンジンよりむしろ単気筒あるいは2気筒のビッグエンジンを好むのも、これが理由ではないでしょうか。


すなわち同じ排気量でしたら、間違いなく少気筒エンジンの方が軽快(加速が良い)で、信頼性も高く、メンテナンス性も優れているからです。

またここ数年の傾向として、2000ccクラスのエンジンで6気筒はかなり少なくなってきましたし、軽自動車においても4気筒エンジンが少なくなってきているのは、その証(あかし)に他なりません。

更に付け加えますと、最近はアイドリングストップ機構が一般的になりつつありますので、これから益々少気筒エンジンが増えていくのは間違いありません。




7-1. 燃費におけるトルクの重要性/第7章:トルクに関する誤解





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