小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)
2010/01: 発行
第4章:エンジン性能曲線
(エンジン性能曲線を見ればそのクルマの特性が分かる)
4-1. エンジン性能曲線
トルクと馬力をほぼマスターした所で、次にクルマのエンジン性能曲線を見てみましょう。
ただし一つのエンジン性能曲線を見ても得る所は少ないので、二つのエンジン性能曲線を見比べてみたいと思います。
下のエンジン性能曲線は、左がガソリンエンジン、右が(日本では人気のない)ディーゼルエンジンの性能曲線です。
図-2. 2000ccガソリンエンジン 図-3. 2300ccディーゼルエンジン
若干排気量が異なりますが、同じクルマ(初代イプサム)に搭載されていましたので、ほぼ同じクラスのエンジンだと思って頂いて良いでしょう。
初代イプサム
このグラフの赤色がトルク、青色が馬力、橙色が燃料消費率(1馬力当りの燃料消費量)を示しています。
これをご覧頂きます様に、回転数が上がると馬力(青線)も上がるのは分かって頂けると思います。
ただし回転数が余りに高くなると、(燃焼効率が落ちて)トルク(赤線)が落ちるので、結果的に馬力も落ちるのも分かって頂けると思います。
またこれを見るだけで、更に以下の事が分かります。
1)ディーゼルエンジン(4000回転で94馬力)より、ガソリンエンジン(6000回転で135馬力)の方が、1.5倍高回転で且つ1.4倍馬力が高い。
2)ディーゼルエンジン(2200回転で21kgf・m)は、ガソリンエンジン(4400回転で18.5kgf・m)より0.5倍低い回転数で1.1倍高いトルクを発生する。
3)ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも、トルクが高いときに、燃料消費率が小さい(エネルギー効率が高い)。
以上をまとめると、ガソリンエンジンの方が馬力が高いが、トルクはディーゼルエンジンの方が大きい、と言えます。
またガソリンエンジンで3000回転、ディーゼルでは2000回転前後で最もエネルギー効率が高い事が分かります。
4-2. グラフのマジック
このエンジンの性能曲線はこれからしばしば出てきますので、もう少し付け加えておきましょう。
突然ですが、数値は人間の感覚と違って極めて客観的に物事を判断できるのですが、それを判断するのがまた人間なので正確に数値を認識しなければなりません。
何が言いたいかと言えば、前述の性能曲線も軸の値の決め方次第で、いか様にも見え方を変えられるという事です。
以下の二つのグラフは、前述のガソリンとディーゼルのエンジン性能曲線をそのままプロットし直したものです。
ピークに多少差が見られるものの、一見するとそれほど大きな差はない様にも見えます。
ところがこの2枚のグラフのスケールを同じにしたらどうなるでしょう。
おやおや。
ディーゼルエンジンの出力特性が、一気に左に寄ってしまいました。
更にガソリンエンジンでは、トルクカーブより馬力カーブの方が上だったのに、ディーゼルエンジンではそれは逆転しています。
上記の様に、ガソリンとディーゼルエンジンは、馬力もトルクも燃料消費率も回転数も全く異なる性能である事が分かります。