小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)

2013/03: 初版
2018/04: 改訂

第20章:テクニック編Ⅱ
(バイクはなぜ車体を傾けると曲がるのか)



20-2. バイクとクルマでコーナーでの傾き方向が違う理由


バイクの話が出た所で、この話もしない訳にはいかないでしょう。

先ほどお見せした以下の写真において、クルマの方はカーブの外側に傾いているのに、バイクはカーブの内側に傾いています。

     
    右カーブ(外側に傾く)          右カーブ(内側に傾く)

変だと思いませんか?

ですが、クルマが外側に傾く理由は簡単に説明できます。


カーブではクルマは外側に傾く

カーブを曲がっている最中は、クルマの重心に遠心力(赤い矢印)が働く事は既にお伝えした通りですが、この力が加わるとどうなるでしょう。

上図の様な場合(クルマの中心位置に遠心力が加わる場合)だとイメージし難いかもしれないので、少し極端にクルマの屋根に赤い矢印の方向に力が加わった場合を想像してみて下さい。

となると、当然写真の様にクルマが傾くのは分かって頂けると思います。


すなわち、クルマは常にカーブの外側に傾くのです。

ではなぜ、バイク(人も自転車もですが)はカーブの内側に傾くのでしょう。

先に答えを言ってしまいますと、バイクの場合も、当然カーブで外側に傾こうとするのですが、それでは倒れてしまうので、ライダーが車体を内側に傾けてバランスを保っているのです。

ではなぜ内側に傾けるとバランスが保てるのか、力学的に考えてみましょう。

難しそうに思いますが、これも非常に簡単な事です。


 倒れない         倒れる         倒れない

解説
先ずバイクが真っすぐな道を走っています。

この場合、黄色の重力しか働いていないので、安定しています。
次にカーブ差し掛かりました。この場合赤い遠心力が働きます。

真っすぐ立っている物に、横から力を加えられたらどうなるか?

タイヤと地面の接触点を中心にしてバイクを右方向に回すオレンジの力(これが以前お話しましたモーメントです)が発生しますので、このままですと当然右側に倒れてしまいます。
でもカーブに差し掛かった時に、左側に傾いたらどうなるでしょう?

このままだと矢印が増えて複雑になるので、もっと簡単な絵にして再度ご説明しましょう。

ちょっとイメージが変わり過ぎたかもしれませんが、下はバイクを簡略してバイクに加わる力(矢印)を追加した絵です。


これを使ってもう一度説明しますと、以下の様になります。

解説
真っすぐ走っていますので、重力だけが働いていて、安定しています。
カーブに差し掛かって遠心力が加わりますので、オレンジの矢印方向に回転しようとします。

このとき倒れない様にするためには、赤い矢印と逆方向の力を加えてやる必要があります。
そのためにはどうするかですが、バイクを内側に傾けてみます。

そうすと、重力がバイクの中心軸から外れる(傾く)事によって、青色の力が生じ、バイクを左側に回転させようとする水色の回転力が生じます。

この左に回転させる力が、同じく遠心力から生じたオレンジの回転力(右側に回す力)と同じになれば、二つの回転力はつり合ってバイクは倒れないという訳です。

絵は少々複雑ですが、原理としては簡単な事です。

ただしこのとき、バイクを傾ける量が少なければ右側(外側)に倒れますし、傾け過ぎればこんどは左(内側)に倒れてしまいます。

人間というものはたいしたもので、それを自然にコントロールしているという訳です。

そういえば、子供の頃に初めて補助輪無しで自転車に乗ったときに、以下の様な経験をした事はありませんか?

曲がろうと思ってもどうすれば曲がれるか分からずに、そのまま壁にぶつかった。


初めて自転車に乗ると曲がり方が分からない

或いは、ハンドルを切ったら転びそうになり、思わず逆にハンドルを切って転んでしまった。

これはカーブでは自転車を傾けないと曲がれないという事を、まだ身体と脳が理解できていないからです。

ただし、何度か身体を傾けると曲がるという事を体感すると、脳と身体がそれを認識して、自然にできるようになるという訳です。

4輪のクルマと違って、バイクでは内側に傾けない限り曲がらないという事を、これでご理解頂けましたでしょうか?

さてまとめです。

上段で矢印をいっぱい書いてしまいましたが、これをシンプルにまとめると、お馴染みの以下の写真になります。


白い矢印(重力と遠心力の合成)に沿ってバイクを傾ければ倒れない

これが何を表しているかと言えば、重力(黄色の矢印)と遠心力(赤色の矢印)を合わせた白い矢印に沿ってバイクを傾ければ、バランスが取れる(倒れない)という事です。

ここまで分かってくると、もっと面白い事が分かってきます。

バイクのレーサーがコーナーで身体をずらしている姿(ハングオン)を見ますが、こうすると何故コーナリング性能が良くなるのでしょうか。

次の項でその謎を解き明かしたいと思います。




20-2. バイクとクルマでコーナーでの傾き方向が違う理由/第20章:テクニック編Ⅱ


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