理想の4WDシステムは電動だった

目次

1. はじめに

弊サイトでは、過去4WDシステムについて色々書いてきたのですが、理想の4WDシステムとは一体どれなのでしょうか？

ビスカスカップリングを使用したシンプルなパッシブ・オンデマンド4WDなのでしょうか、それとも電磁カップリングを使用したアクティブ・オンデマンド4WDなのでしか、或いは電子制御のフルタイム4WDなのでしょうか、はたまたメカ式のフルタイム4WDなのでしょうか？

現状これだけ色々な種類の4WDシステムがあるという事は、どれも一長一短あって一つに決められないのでしょう。

と、長い間そんな風に考えていたのですが、先日とある記事を書いていてようやく気付きました。

弊サイトが考える理想の4WDシステムは、電動4WDです。

という訳で、何故そう思うのかについて話をしてみたいと思います。

2. 電動4WD

先ずは今まで一度も取り上げなかった電動4WDについて述べたいと思います。

量産車で始めて電動4WDが搭載されたのは、2001年に発売されたトヨタエスティマのハイブリッド車（E-Four）ではないでしょうか。


これは上の図の様に、後輪の駆動用にフロントモーター（発電機）とバッテリーとリヤモーターが搭載されており、必要に応じて後輪を駆動するというものです。

これを初めて見たときは、遊星歯車を使ってエンジンとモーターの両方で前輪を駆動するプリウスと比べて、何て単純な機構なんだと思ったものです。

なお上の図には描かれていませんが、当然ながら後輪には減速機とデファレンシャルギアも搭載されていました。

次に目にしたのは、2002年に発売された日産マーチのe-4WDです。


これはご覧の通り、エネルギーの回生機能はなく、エンジンで発電した電気を直接使ってモーターで後輪を駆動するものです。

これらの電動4WDシステムは、通常の４WD車なら当然存在するセンターデフに相当する機構が無いため、当初はおもちゃの様な4WDだと思ったものです。

このためメカ好きな弊サイトでは、全く以って興味もなく、記事としても取り扱っていなかったという訳です。

では何故、この電動4WDが理想の4WDシステムと言えるのでしょうか。

3. センターデフ

それは実に簡単で、4WDシステムの肝であり、最大の弱点とも言えるセンターデフが存在しないからです。

センターデフ（center differential）とは、前輪と後輪の回転差を調節する役割を果たします。（詳細はこちら）


ただし単純なセンターデフ（デファレンシャルギア）だと、万一一つのタイヤが空転すると、全ての駆動力がそのタイヤに伝わって、前に進めなくなってしまいます。

このためセンターデフに様々な工夫を凝らして、例え1輪が空転しても他の車輪に駆動を伝える様にしています。

ここまでは良いのですが、問題はタイヤの外径が微妙に異なる場合です。

その場合、殆ど全ての4WD車においてこのセンターデフに無用な負荷が掛かるのです。

例えばですが、下はスバル・レガシーの取扱説明書の抜粋です。


ここにあります様に、もし異なるサイズのタイヤを履いて乾いた路面を走行すると、センターデフがオーバーヒートして警告灯が点灯するのです。

仮に警告灯が点灯しなくても、異なるサイズのタイヤを履けば、センターデフを始めとした駆動系に無用な負荷を与え続ける事になります。

4. センターデフレス4WD

そうなると、誰もが思い付くのはセンターデフの無い、電動4WDです。

これであれば、異なる4本のタイヤを装着できる、とまでは言いませんが、タイヤの径にそれほど気を使う必要もありません。

また更に、電動4WDの場合、センターシャフトも不要になります。

そうなるとシャフトの分重量も軽くなりますし、駆動系の摩擦ロスも少なくなり、さらに室内も広くできます。

そんな訳で、街乗り4ＷＤでしたら間違いなく電動4ＷＤがお勧めと言えます。