誰も言わなかったスポーツカーの短所
(知っておいて損のないワースト10)

2014/06: 初版
2019/07: 改訂

目次



はじめに


若者向けに企画したトヨタ86とスバルBRZが予想外に年配者に売れた事から、従来でしたらスポーツカーのオーナーが意地でひた隠しにしていたスポーツカー短所が、白日の下に晒(さら)されてしまいました。

  

昔から、あばたもえくぼ、恋は盲目、と言われる様にスポーツカーだから許せるのかもしれませんが、ここまできたら事前に知っておいて損はないでしょう。

題して、誰も言わなかったスポーツカーの短所(知っておいて損のないワースト10)です。

それでは早速第10位から見ていきたいと思います。


10位:乗降性が極めて悪い


車高が低いのは、スポーツカーにとってのステータスシンボルと言えるかもしれません。

ですが、これが色々な所に弊害をもたらします

先ず一番の弊害は、乗り降りのし難(にく)さです。

もちろん、体が柔らかく腹筋のある若い時分ならば何とかなったかもしれませんが、ただでさえ屈むのが苦手な年配者の場合、あの低い開口部から、身をよじって更に低いシートに座る(落下する)のは、かなりシンドクてアクロバティックな作業である事を覚悟しなければなりません。

また降りる際も、颯爽と降りるのとは程遠く、開口部の敷居に手を付いて冬眠明けの熊の様に這い出てくる必要があります。

実際86の場合、アシストパッドと呼ばれる降車時の手着きプレートまで付いている念の入りようです。


アシストパッドと呼ばれる86の手着き用プレート(赤い部分)

ちなみにこのプレートは、後席から降車するためだと思われるかもしれませんが、だとしたら前席の先端までプレートを延ばす必要はありません。

また86よりも更に車高の低いスポーツカーから乗り降りする姿を、羨望の眼差しでじっくり観察してみて下さい。


ランボルギーニ・カウンタックに乗り込むドライバー



ロータス・エキシージから這い出るドライバー

いずれにしろ、少々腹の出た年配者がスポーツカーから乗り降りする際は、人目に付かない所でそっと行うのが基本マナーです。(注1)

注1

ただし、スマートな女性がスポーツカーに乗降する姿は例外で、非常に絵になります。

むしろ優雅にさえ見えます。


また運転席に座った姿も、(大きめのセダンに乗ったときの様に、運転席から首だけ見えているのと異なり)非常にお洒落です。

という訳で、こと乗降性の問題に関しては、流麗な女性は対象外と言えます。

なおその際は、どんなに寒くても決してパンツルックではなく、ショートパンツ(できればミニスカート)をお願いしたいものです。

ところでトヨタ86(車高: 1285mm)よりももっと車高が低いのが、マツダのロードスターやダイハツのコペンです。
  
旧ロードスター(車高: 1,255mm)        旧コペン(車高: 1,245mm)


 
新ロードスター(車高: 1,235mm)        新コペン Robe(車高: 1,280mm)

ではこれらのクルマの乗降性は86より劣るかと言えば、決してそんな事はありません。

少なくともこの乗降性に関して、ロードスターやコペンにはその車高の低さを補う大きなアドバンテージがあるのです。

何だと思われるでしょうか?

それは屋根が開く事です。

屋根が開くのは、晴天時にフルオープンで走るためだけと思われる方が殆どでしょうが、それは大きな間違いです。


実際日本でフルオープンで気持ち良く走れるのは、気温が25℃前後で、日差しも風も穏やかな日ですので、1年でほんの数日しかありません。

関東地域でしたら、せいぜい5月の連休前後と10月の前半くらいでしょう。

それ以外は、どえらく暑いか、寒いか、雨降りですので、ルーフを閉じて走る場合が殆どです。

ですが、屋根が開くもう一つの大きな利点は、乗り降りが楽に行なえる事なのです。

ご存じの方も多いかもしれませんが、007のボンドカーに採用されたトヨタ2000GTですが、本来はクーペボディーにも関わらずなぜ映画ではオープンカーになったのでしょう?


映画007に登場したオープンカーのトヨタ2000GT

理由はしごく簡単で、ジェームズボンドならぬショーンコネリーが、間口が狭くて低い2000GT(車高:1,160mm)に簡単に乗り込めなかったため、止む無く天井を取ってオープンカーにしたのです。

また日本でも以前放映されたUSAの刑事ドラマのマイアミバイアスを見て、扉を開けずにオープンカー(Ferrari Daytona)に飛び乗るシーンに、憧れた方もいらっしゃるのではないでしょうか?



マイアミバイスに登場したオープンカーのFerrari Daytona(車高:1,245mm)

そうなのです。

乗降時には先ず屋根を開けて、スマートに乗り降りし、乗降が終わったら優雅に屋根を閉じる。

これこそが、オープンカーの正しい使い方です。

ついでに言うと、Tバールーフやタルガトップに至っては、ルーフ開口部も狭く且つフロントウィンドウが頭上まで迫っているので、ルーフを開けても殆ど解放感など感じません。


    300ZX Tバールーフ(車高:1,225mm)

ですので屋根を開けていた事にフッと気付くのは、突然の雨か、強い風の巻き込みか、さもなければ暑い直射日光を受けたときぐらいです。


C7 Corvette タルガトップ(車高:1,235mm)    

ただし、運転席と助手席上部に屋根が無い事による唯一無二のメリットが、乗り降りのし易さという訳です。

いつの日か、扉を開けると自動的に車高が上がり、扉上部の屋根も自動で開閉するスポーツカーが出てきてほしいものです。

ところで、そう言えば現代版ライトウェイトスポーツカーのホンダCR-Zはどうしたんだ、と思われた方はいらっしゃらないでしょうか?


2016年末に生産中止になったCR-Zの最終モデル

実はCR-Zの車高は1,395mmと、86の1,285mmより100mm以上も高いのです。

この辺が、どうしてもCR-Zをスポーツカーとして扱って貰えなかった理由かもしれません。

ところで、ご存じでしたでしょうか?

このCR-Zは、86を真っ向ライバルと捉えていたのです。

下の表にある様に、86が発売された2012年のマイナーチェンジで、CR-Zはトルクウェイトレシオを従来の63.8kg/ kgf・mから58.8kg/ kgf・mに大幅に向上させ、86の58.9kg/ kgf・mより0.1ポイントリードさせたのです。

車種 発売日 トルクウェイトレシオ
旧CR-Z 2010/2 63.8kg/ kgf・m
86 2012/4 58.9kg/ kgf・m
新CR-Z 2012/9 58.8kg/ kgf・m

恐らくそんなのは単なる偶然だろうと思われる方が大多数でしょうが、フランスの哲学者のデカルトはあらゆる事象には因果関係があると唱えています。

それはともかく、元祖86とも言えるAE86レビン/トレノでさえ車高は1,335mmでしたので、CR-Zはそれより60mmも高かった事になります。


86レビンの車高は1,335mmでCR-Zより60mm低かった

少なくと日本でスポーツカーとして見て貰うためには、どうしても車高が低くなければいけない様です。

それが分かった所で、続く第9位と8位は同じく車高の低さに起因する更に深刻な問題です。




スポーツカーの短所(第10位)




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