小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)
第17章:クルマの空力特性
(後付けエアロパーツは百害あって一利無し)
17-3. ダウンフォースの稼ぎ方
それでもどうしてもダウンフォースが必要な方に、ウィングを付けずにダウンフォースを得る手段をお伝えしましょう。
驚くほど簡単ですが、分かりますか?
クルマの荷重を増やせば良いのです。
もし後輪にダウンフォースがほしければ、後部座席に人を乗せれば良いのです。
いや、私はどうしても一人でドライブしたいとなったら、トランクに荷物を乗せれば良いのです。
クルマの荷重を増やすという事は、運動エネルギーが変わるので、厳密にはウィングと同じ効果とはいえませんが、ダウンフォース(下に押す力)でいえば同じ事です。
17-4. 市販車におけるリアウィングの目的
さんざんウィングの悪口を言いましたが、ではなぜ市販車にも目立つリアウィングが付いているのでしょうか?
有名な所では、アウディ TTクーペです。
このクルマには当初リアウィングは付いていなかったのですが、高速走行でクルマが浮き上がるという不具合が発覚し、それを抑えるために急遽追加されました。


Audi TT Coupe First Generation
また今でこそ多少小ぶりになりましたが、ポルシェ911ターボの大きなリアウィングも同じ目的と言ってもいいでしょう。

Porsche 911 Turbo
すなわち、本来ならば邪魔で風の抵抗となるウィングは付けたくないのですが、車体上部が曲線を描く形状が災いして、高速域で車体が浮かぶのを防ぐため、止む無く付けているのです。
具体的には、車体下部に比べて速い車体上部の風の流れをリアウィングで撹き乱して、浮き上がり(リフト)を抑えているのです。
一方通常の国産車ですと、スポーツカーであっても(曲線と言うより)むしろ箱型に近い形状ですし、海外の様に時速100km以上の高速走行などする場所もありませんので、クルマが浮き上がる心配などありません。
また国産車でも小型のリアスポイラーが付いたものがありますが、これは殆どデザイン上(営業上)の目的で、空力対策と言いながらも実は極力風の影響を受けない様に控え目にしてあります。
リアウィングは高性能車の証だという間違った常識が広がると、設計者としては付けたくなくても、営業サイドの意見を飲まざるを得なくなるのです。
17-5. お勧めのエアロパーツ
さて、さんざんウィングの悪口を言いましたが、一つだけ弊害が少なく効果が期待できるエアロパーツをご紹介しておきます。
フロントグリルの下部に付ける、フロントスポイラーです。

フロントスポイラーは、数少ない弊害が少なく効果が期待できるエアロパーツである
これですと比較的弊害が少なく、空気抵抗(CD)を低減でき、且つリフトも抑える事ができます。
ただしこれによって全面投影面積も増えますので、頻繁に高速走行を行なわない限り、やはり弊害の方が多いかもしれません。
また下に延ばし過ぎると、最低地上高が減ってちょっとした段差を乗り越える度に、アゴをぶつける事になります。
更に、中には顎が突き出た様なフロントスポイラーもしばしば見られますが、これらはどう見ても弊害だらけになるのは間違いないでしょう。
という訳で、やはり後付けのエアロパーツはお勧めできない、というのを本章の結論としたいと思います。
17-3. ダウンフォースの稼ぎ方/クルマの空力特性