小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)

2010/01: 発行
2019/07: 更新

第2章:トルクとは
(トルクに関する物理の基礎)



2-5. 単位について(20kgは間違い)


ここでは重さや力の単位について、余り知られていないお話をしたいと思います。

たまに重量や力の単位を、KG、Kg、kgF、N・Mと書かれた記事が見受けられますが、これは明らかに間違いです。

正しくは、kg、kg、kgf、N・mと書くのが正解です。

そんな事、誰が勝手に決めたのだと思われるかもしれませんが、これは日本を含めた国際規格(SI単位)で決められているのです。

単位を示す文字は、大文字と小文字で明確に意味が異なります。

前述の例の場合、大文字のKはケルビン、Gはギガ、Fはファラッド、Mはメガを表しますので、ご注意願います。

ですので、KGと書くとケルビンギガとなり、意味不明な単位になってしまいます。

本書も余り偉そうな事は言えませんが、単位の書き方を間違えている技術文書は、中身の信ぴょう性を疑ってみた方が良いかもしれません。

ただし例外として、小文字のだけ”ミリ”と”メートル”の二つの意味を持っています。

それでは最後に、とっておきの事をお伝えしましょう。

以下の三つのうちどれが正しい書き方(国際単位に準拠している)か、分かりますか?


一番左はKが大文字なので間違いなのは分かるとして、なぜ中央もバツなのでしょう。

もしかしたら中学校の先生もご存じないかもしれませんが、SI単位では数字と単位の間には必ずスペースを入れる事になっているのです。

その証拠として、以下にSI単位における当該説明文を参考で載せておきます。

7.2 Space between numerical value and unit symbol
7.2 数値と単位の間のスペース

In the expression for the value of a quantity, the unit symbol is placed after the numerical value and a space is left between the numerical value and the unit symbol.

量の値を表す場合、単位は数値の後に置き、数値と単位の間にはスペースを入れる。

The only exceptions to this rule are for the unit symbols for degree, minute, and second for plane angle: °, ', and ", respectively, in which case no space is left between the numerical value and the unit symbol.

(ただし)例外として、角度に関する度(°)、分(')、秒(")については、数値と単位の間にはスペースを入れない。

(NIST Guide to the SIの抜粋)

ですから、正確には中央の20kgも間違いなのです。

下の抜粋の様に欧州の自動車メーカーのカタログを見ると、(小さくて見難いかもしれませんが)数字と単位の間にはきちんとスペースが入っているのが分かると思います。

 仏プジョー508のカタログ引用 
(1598 cm3、240 Nm等)
 独ポルシェ911カレラのHP 
(257 kW、350 PS等)

なお日本人の感覚ですと数値と単位の間にスペースがあると、何か書き込まれて簡単に偽造できてしまうと心配されるかもしれません。

ですが、常にスペースが付くのが正しいと知っていれば、スペースが無ければ偽造されていると、直ぐに判断できます。

ところで、右上のポルシェのカタログには7.400 1/minとありますが、この1/minの意味は分かりますでしょうか?

これはSI単位でrpm(rotation per minutes)を表します。

すなわち、rpmはSI単位ではないので、正しくは1/minと書かなければなりません。

またついでにお伝えしておくと、0-100 km/h in 4,8 -4,6 s、となっていて小数点がカンマになっていますが、これはその文書の中で統一すれば、点とカンマのどちらを使っても良い事になっています。

ただし数値の区切りに点やカンマを使ってはいけない事になっていますので、7.400(或いは7,400)と書くのは間違いです。

正しくは、7400もしくは7 400と書かなければなりません。

ですので、厳密に言えばポルシェの記述も正しくありません。

これであなたは、学校の先生以上に単位について詳しくなったと思います。

アメ車の馬力とトルクの単位

欧州の自動車メーカーでは、数値と単位の間にスペースが入っていましたが、それではアメリカではどうなっているのでしょう。

アメリカの場合、国としてはSI単位に準拠する事になっているものの、昔からの単位であるlb(ポンド)やft(フィート)も使って良い事になっています。

このため、アメ車の馬力はhorsepower、トルクはlb-ftと表されているのですが、それでもやはり数値と単位の間にはスペースがあるのが見て取れます。


数値と単位の間にスペースがあるコルベットの広告

ところで、この話はご存知でしょうか?

日本では計量法によって、インチやポンドといった単位を、契約書やカタログ、仕様書等には使ってはいけないと、決められているのです。

このためテレビのサイズを、36インチ、42インチではなく、36型、42型と読んでいるのはそのためです。

そして、日本ではインチ単位の測定器は売ってはいけないのです。


アメリカで使用されているインチ単位の物差し

ですから銀座の伊東屋へ行っても、インチ単位の物差しは売っていないのです。(ですが、もしかしたら測定器ではなく単なるオブジェとしてならば購入できるかもしれません)

ところでこのインチ単位の物差しですが、長さは304.8mmと日本で使われている300mm(30cm)の物差しと長さが非常に似ています。

更にです。

日本で昔使われていた1尺の物差しの長さは303mmと、これまた非常に似た長さになっています。

恐らくこれは偶然ではなくて、人が使う物であるが故に非常に似た長さになったと思うのが自然ではないでしょうか。

ついでにもう一つ。

このインチとは、元々親指の付け根の幅を元にした、ヒューマンスケールです。

そして、このインチを元にした用紙が、アメリカで一般的に使われているレターサイズです。


A4サイズの縦横比は1:√2、レターサイズは8½インチ×11インチ

A4サイズに慣れた日本人から見ると、このレターサイズは幅広に感じるのですが、一度使うと却ってこちらのサイズの方が使い易く感じてきます。

この理由は、前記したヒューマンスケールが元になっている気がするのですが、いかがでしょうか?

一方日本を始めとして、世界中で使われているA4サイズは、どこで発明されたかご存知でしょうか?

これはドイツ人が発明したのです。

A4サイズの縦横比は1:√2となっており、これを半分に切っても1:√2となるという魔法の様なサイズなのです

ですので、コピーで拡大、縮小を掛けても、左右のバランスが崩れる事がありません。

ところがレターサイズの場合、拡大/縮小を行うと上下の余白がなくなったりするので、コピーに手間取ったりする事になります。

このコピーに関連して面白い話があります。

先程お伝えした様に、レターサイズはアメリカで一般的に使われているのですが、一昔前のアメリカの官公庁では、このレターサイズより一回り小さい用紙(8インチx10.5インチ)が使われていました。

そう言えば日本でも、一昔前の官公庁では日本独特のBサイズ用紙が使われていました。

ところが複写機が普及し始めた1980年台、日本製複写機がアメリカの官公庁でも多く使われる様になったのですが、その当時の日本製複写機がその用紙サイズをサポートしていなかったため、レイガン大統領が官公庁の用紙も通常のレターサイズに統一したという事です。

すっかり脱線してしまいましたが、少しはお役に立ちましたでしょうか?

一方、日本メーカーの記述は、本書が知る限り数値と単位の間にスペースは全く入っていません。


日産GTRのHP(8.6km/L、404kW、550ps等)

日本語の場合、数値も単位も全角文字(例えば全角だと123kg、半角だと123kg)を使うケースもあり、数値と単位の間にスペースがあるかどうか判別しにくい面もあるのですが、英文の仕様書を見ても日本メーカーの物はやはりスペースが入っていません。

今後どの日本メーカーが、きちんとスペースを入れるか楽しみです。

実は、かくいう本書もスペースが入っていないので、いつか暇を見て修正したいと思います。

トルクについての説明の最後に、意外にご誤解の多い”加速”とは一体何かについて述べたいと思います。




2-5. 単位について/第2章: トルクとは





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