小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)
2010/01:発行
2016/05:追記
2016/05:追記
第3章: 馬力とは
(馬力が分かれば、スピードが分かる)
3-2. 馬力からスピードを計算する
さきほどの図6を見て、もしかしたらクルマを動かすのに必要な力(抵抗)と、クルマの馬力が分かれば、スピードが計算できるのではないかと、ひらめいた方は居ませんか?
図6: 質量75kgの重りに重力加速度(9.8m/s2)が加わると75kgfの力になる
その通り可能です。
ご存知かもしれませんが、小型の乗用車でしたら、(エンジンが掛かっていない状態で)大人が押せば非常にゆっくりですが水平に動かす事は可能です。
図4: 75kgfの力で3.6km進めば1馬力
もしこのクルマを動かすための力が、上図の様に丁度75kgfだとすると、先ほど説明した通り1馬力で1時間に3.6km移動できますので、もし100馬力あれば、1時間でその100倍の360km移動する事ができます。
すなわち、75kgfの力で動かすことのできるクルマに100馬力のエンジンが付いていれば、時速360kmで進む事ができるという訳です。
これを式で表すと以下の様になります。
速度(km/h) | = | 馬力(PS) ÷ 動かすのに必要な力(kgf) × 270(km·kg/h/PS) |
= | 100PS÷75kgf×270km·kg/h/PS | |
= | 360km/h |
ただし計算上はそうでも、実際にはスピードが速くなると空気抵抗が非常に大きくなるため、そこまでのスピードは出せないのはご存知の通りです。
3-3. 風の抵抗
先ほど風の抵抗について触れましたが、折角ですのでこれについてもここで、もう少し付け加えておきましょう。
高速道路で車が時速100km(秒速28m)で走行している場合、このときの風の強さはどの程度だと思いますか?
時速100kmで走行すると風速28m/sの風を受ける
車内では窓を開けてもさほど実感できませんが、実はそのときの正面に当たる風は中型台風(風速15~32m/s)並みで、もし人の全身がその風を受けると、まともに立っていられない程の強風なのです。
また空気抵抗はクルマのスピードの2乗に比例しますので、もしスピードが2倍になったら空気抵抗は4倍、もしスピードが10倍(例えば時速10kmが時速100km)になったら空気抵抗は100倍、そして30倍になったら何と900倍にもなります。
ですので、時速10kmで走行時の風の抵抗が1kgfだとすると、時速300kmだと900kgf、すなわち1t近い力で押し戻されているという訳です。
時速300kmで走行すると、1t近い荷重を引く事になる。
また前述の時速360kmとなると、100kmと比べて風の力は更に13倍になりますので、台風の13倍の風に逆らって進むのがどれほど難しいか分かって頂けると思います。
もし最高スピードに挑戦するのでしたら、馬力を上げる事より、いかに空気抵抗を減らすかが重要になります。