小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)
2010/01: 発行
第4章:エンジン性能曲線
(エンジン性能曲線を見ればそのクルマの特性が分かる)
4-8. 高回転エンジン
ご存じの方も多いかもしれませんが、ホンダのスポーツカーであるS2000が販売から数年経って2,000ccから2,200ccに変更されました。
この理由は一重に、この低速トルクの低さを補うためであったのは間違いありません。
もう少しストレートに言うと、(更に高性能にしたのではなく)低速トルク(最大トルクは22kgf・mでしたが何と7,500rpmの高回転でようやく発生)が余りに細くて非常に運転しにくい(加速が悪い)ので、排気量を増やしてトルクを上げることによって、一般車並みの加速性能に引き上げたという訳です。
上のグラフをご覧頂く様に、新エンジンは、馬力も回転数も従来より抑えながら、ひたすらトルクアップを狙った事が伺えます。
ただし2,000ccで250PS/8,300rpmは、技術的に見ると驚異的な数値で、この先レシプロ(ピストン)エンジンでこれほど高回転のエンジンが市販される事は恐らくないでしょう。
ところでこれと双璧をなすのが、ご存じロータリーエンジンを搭載したマツダRX-8の250PS/8,500rpmです。
これも同じ様にトルクが細い(22kgf・m/5,500rpm)のですが、S2000が6速マニュアルだけだったのに対して、RX-8には6速ATがある事が救いだったかもしれません。
4-9. 変速ギヤ数
前段で6速ATの話が出た所で、変速ギヤ数の話をしましょう。
通常どなたも変速ギヤ数は多ければ多いほど良いと思われるでしょうが、これも間違いです。
トルクが大きければエンジン回転の守備範囲が広いので、変速ギヤ数は少なくて済むのです。
すなわちトルクの小さなクルマほど、満足する加速を得るためには、どうしても変速ギヤ数を多くしなければいけないと言う訳です。
変速ギヤ数が多いと一概に悪いという訳ではないと思われるかもしれませんが、ちょっと加速する度にキックダウンしてうるさくなったり、ミッションがより重くなったり、値段が高くなったりする事を考えると、良い事だけではないというのは分かって頂けるでしょうか?
4-8. 高回転エンジン
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