小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)
2010/01: 発行
2017/04: 追記
2017/04: 追記
第6章:トルクと加速度の関係
(ニュートンの第2法則を使って、トルクから加速度を求める
6-6. 加速度計算の応用編
それでは上記を応用して未知のクルマの加速度を求めてみましょう。
とするとやはり今話題の、トヨタ86(BRZ)とCX-5ディーゼルでしょうか。
トヨタ86(BRZ) CX-5ディーゼル
まずトヨタ86ですが、4000回転でトルクカーブに落ち込みがありますが比較的フラットですので、平均トルクを17kgf・mとします。
また高回転エンジンとは言え、さすがにGT-Rの様に2速で時速100kmまでのカバーするのは難しいでしょうから、1速~3速のギヤ比(15~16)の間を取って2速の9を平均ギヤ比とします。
これを前述の式に入れると以下の様になります。
86の加速度 | = | トルク/車重 |
= | (トルク×重力加速度×ギヤ比/タイヤの半径)÷車重 | |
= | (17kgf・m X 9.8m/s2×9 / 0.32m)÷1230kg | |
= | 3.8m/s2 | |
0-100km/h到達時間 | = | 速度/加速度 |
= | 100km/h ÷ 3.8m/s2 ÷3.6km/ | |
= | 7.3秒 |
次にCX-5(ディーゼル)ですが、2000回転をピーク(42.8kgf・m)にトルクは下降していますのですので、平均トルクを控えめに26kgf・mと見積もります。
またこちらも3速で時速100kmまで達するとして、1速~3速のギヤ比が14~6ですので、やはり間を取って2速のギヤ比の8を平均ギヤ比とします。
これを前述の式に入れると以下の様になります。
CX-5の加速度 | = | トルク/車重 |
= | (トルク×重力加速度×ギヤ比/タイヤの半径)÷車重 | |
= | (24kgf・m X 9.8m/s2×8 / 0.3m)÷1510kg | |
= | 4.2m/s2 | |
0-100km/h到達時間 | = | 速度/加速度 |
= | 100km/h ÷ 4.2m/s2 ÷3.6km/h | |
= | 6.7秒 |
これからすると、トヨタ86よりディーゼルのCX-5の方が早いという事になりますが、実際はどうでしょうか?
もしかしたら大多数の方が、ディーゼル車がスポーツカーより早い訳が無いので、上記計算はどこか間違っていると思われているのではないでしょうか?
でも騙されたと思ってもう暫くお付き合い頂ければ、あながちこの計算が間違いでない事を分かって頂けると思います。
その後、本記事をお読み頂いた読者より、雑誌「Driver 2012年8月号」でBRZ(86)とCX-5の同一条件における加速試験結果が記載されているとの情報を頂きました。
それによりますと以下との事です。
項目 | 0→60km/h | 0→100km/h |
BRZ(AT)の加速試験 | 4.23秒 | 8.56秒 |
CX-5の加速試験 | 3.96秒 | 8.66秒 |
生憎前段の計算値とはかなり異なりますが、0→60km/hまではCX-5の方が速かったのは間違いない様です。
という事は、スタートから33m(=3.96s×1000m/3600s/2)地点までは、CX-5が速かったという事になります。
事実(試験結果)は素直に受け止めるべきなのですが、どうもCX-5が遅い様な気がします。
CX-5で2速スタートしたらどうなるか、知りたい所です。
新情報
2018/11: 追記
本件に関して、新たな情報を仕入れましたので、お知らせ致します。
それが下のグラフです。
Cセグメントのクルマ(いずれもAT)5車における加速試験結果
これは、 月間自家用車の2017年1月号に記載されたCセグメントのクルマ(いずれもAT)の加速試験結果です。
この中のアクセラ2.2Dのグラフを見て頂きたいのですが、スタート直後の出だしが他車より1テンポ遅れています。
正確には1マスが0.35秒ですので、他車より0.4秒程出だしが遅れています。
ご存じの様にアクセラ2.2Dのエンジンは、CX-5と同じディーゼルエンジンを搭載しています。
生憎この試験の車両は全てAT車なので一概には言えないのですが、もしかしたらCX-5(MT)においてもこの0.4秒の遅れが発生しているかもしれません。
もしそうだとすると、この遅延さえなければ、CX-5の方がBRZ(AT)より0→100km/hにおいても速かったかもしれません。
なお、この遅延の原因はATトランスミッション起因の可能性が高い様な気もするのですが、一応お伝えしておきます。