誰も書かないホンダS660の真実
2015/4/7(火)
目次
6. 実用性
スポーツカーですので、多少実用性が劣るのは止むを得ない事でしょう。
ですが、スペックを見るだけでもかなり気になる事がありますので、心を鬼にして指摘しておきたいと思います。
荷物を積めない
最大の問題は、荷物を積めない事です。
当然ながらリアにはエンジンが鎮座していますので、トランクは存在しません。
実はミッドシップエンジンであってもエンジンの後ろに僅かながらスペースがあるのですが、S660の場合直前にエンジン、直下にマフラーがあるため、昇温のため荷室を諦めたと思われます。
S660のエンジン後方に僅かなスペースがある ビートのリアトランク
またフロントのボンネットに、折り畳み式の屋根を格納するスペースがあるのですが、残念ながら嵩張(かさば)る物は積めません。
また室内の収納スペースも限られていますので、万一同乗する彼女が大き目のピクニックバックにお弁当を入れて持って来たら、ドライブ中そのバックを膝に抱えていなければなりません。
またうっかりカメラでも持ってきたら、彼氏はドライブ中、首からカメラをぶら下げていなければなりません。
そしてもし、うっかり途中でお土産でも買おうものなら、紙袋を足元に置いておかなければなりません。
ちなみに車内の収納スペースは以下の通りで、助手席のドリンクホルダーも標準で付いていない様です。
ただし、いい物を見つけました。
リア中央にコンビニフックがありますので、お弁当の入ったコンビニ袋はここに引っ掛けて、颯爽と走行する事が可能です。
リア中央のコンビニフック
ただし気恥ずかしいのと、コンビニ袋が風ではためいて騒がしいので、屋根は開けない方が良いかもしれません。
いずれにしろ、年配者が一人で優雅に乗るのでしたら、これで十分なのかもしれません。
試乗記を読むと、一度も所有した事もない自称自動車ジャーナリスト達が、スポーツカーなのだから荷物は積めなくても問題ないと無責任に書いていますが、所有して初めてその過酷さに気が付くことになります。
ホンダビートの背面キャリア
恐らく今後最も売れるS660のオプションパーツは、ビート同様背面キャリアになるのは間違いありません。
狭い低い
狭い事は覚悟の上でしょう。
ただし運転中に髪の毛が天井に触れると、かなりイラつきますので、試乗するときは寝起きの髪で行った方が良いかもしれません。
上図は最低地上高を表すイラストですが、いみじくも天井の低さを露呈しています。
恐らくこのイラスト上に屋根を描いたら、どうみても頭が天井に接触しているでしょう。
大柄の人は特に要注意です。
そして次は音です。
うるさい
オープンカーがうるさいとは何事だと叱られるかもしれませんが、うるさいのは風のせいだけではないのです。
ご存じの通り、エンジンが真後ろにありますので、フロントエンジンより断然エンジン音は良く聞こえます。
雑誌には遮音性は十分だの、小気味良いサウンドと書かれるのでしょうが、うるさい事に変わりありません。
ホンダもスポーツサウンドと呼んでいますが、一昔前ならともかく、21世紀になってもスポーツカーはうるさくても良いとする風潮は何とかならないでしょうか?
短時間ならともかく、長時間ですと次第に苦痛になるのは間違いありません。
ついでに言っておきますと、アイドリング時を含めた低速回転時の不快な振動は、前からではなくシートの後ろから伝わってくる事になります。
アイドリングストップ機構があっても、エンジンスタート時には毎回ブルッと背中が震えます。
熱い暑い温い
S660のHPを見ると、冷却性能について頁を割いて詳しく説明していますが、裏を返せばそれだけミッドシップレイアウトはエンジンルームの冷却が難しいという事です。
エンジン自体は何とかフロントのラジエターと水で冷却できたとしても、前方に開口部がなく四方が密閉されたエンジンルームの熱を逃がすのは至難の業です。
それが最終的にどう影響するかと言えば、徐々に運転席後ろの壁が熱せられ、背中から熱くなるのです。
もちろん、冬場や短距離走行では問題ないものの、夏場に長時間運転すると後ろから徐々に熱くなっていきます。
走っているうちは多少なりともエンジンルームに風が入るのでまだ良いのですが、渋滞に捕まったらもう最悪です。
おまけにエアコンの冷気は、前からしか吹き出さないため、気が付いたら背中が汗でベトベトになるという訳です。
もう、考えただけでも暑くて寒気がします。
さて、今まで散々S660について悪態を付いてしまいましたが、でも次は(心を入れ替えて)S660の各段に優れた点をお伝えしたいと思います。
一体何だと思われるでしょう?
恐らく全く予想外の事だと思います。