小学生でも分かるトルクと馬力の話
(本当に早いクルマとは?)



第13章:タイヤホイール
(実は鉄製より重いアルミホイール)

2010/1: 初版
2022/9: 改定


13-2. 知られざるアルミの短所と長所


ご質問を頂いた事もあり、アルミの特徴について、もう少しここで述べておきたいと思います。

アルミは錆び易い

先ず1点目。

アルミは鉄より錆び難い、と思っていませんか?

これも100%間違いではないのですが、実のところアルミは鉄以上に錆び(酸化し)易いのです。


ただしその錆は、別名アルミナとも呼ばれる比較的丈夫で安定した白い金属(酸化アルミニウム)のため、それによってアルミが錆びたと認識されず、且つアルミ内部が守られているという訳です。

アルミは地球上で一番多い金属

続いてもう一つ。

もしかしたら、鉄よりアルミの方が貴重な金属だと思っていませんか?

それも大きな間違いで、地球上で一番多い金属はアルミ(鉱石はボーキサイト)なのです。

アルミはかさばる

また前段でさんざん述べました様に、アルミの重さは鉄の1/3だが、強度も1/3なので単純に鉄より軽くはできません。

と、今までどちらかと言えばアルミに関してネガティブな話をしてきまましたが、ならばアルミの長所とは一体何なのでしょうか?

実は、アルミの最大の短所であり長所は、”かさばる”事なのです。

それでは説明を簡単にするため、ある角形フレームの強度を維持したまま鉄をアルミに変えたら、フレームの体積が3倍になったとしましょう。

とすると、鉄と同じ強度/重さでありながら、アルミにしたら3倍もかさばる事になります。

クルマのアルミホイールを思い出して頂ければ、鉄のホイールが薄い鉄板でできているのに対して、アルミはそれよりかなり太く/厚くなっているのが分かると思います。

実はこのかさばる事が、短所でもあり最大の長所なのです。

突然ですが、例えば厚み1mmの金属の板があったとして、それを曲げる力が1kgfだとします。

とすると、同じ金属の厚さ2mmの板を同じ様に曲げるには、どのくらいの力が必要でしょうか?

厚みが2倍になったのだから、力も2倍の2kgfと思われるかもしれませんが、それも大間違いです。

厚みが2倍になると、曲げる力はその3乗に比例して、何と8(=2×2X2)倍になるのです


剛度は板厚の3乗に比例する

もし厚みが3倍になると、その3乗で27(=3×3×3)倍になるのです。

すなわち、同じ金属であれば厚みが3倍になると、27倍曲げ難くなるのです。(この曲げ難くさを、剛度もしくは剛性と呼びます)

金属ではありませんが、厚さ2~3mmのベニヤ板なら簡単に曲がるのに、かまぼこの板の様に厚みが10mm程度になったら、途端に全く曲がらなくなるのはこのためです。


かまぼこの板は曲がらない

ただしアルミは、同じ厚みでも鉄より1/3軟らかい(曲げ易い)ので、厚みが鉄より3倍厚くなると前述の27倍とこの1/3を掛けて、9倍剛性が高くなる(曲げ難くなる)のです。

話が長くなってしまいましたが、鉄をアルミに変えると、強度と重さは変わらないものの、体積は3倍になり、剛度は何と9倍に跳ね上がるという訳です。

良く生産ラインの治工具台や、身近な所ではハードディスクの筐体にアルミが使われるのは、加工が楽なのと、何より厚みが増す分鉄より剛度が上がり頑丈になる(曲がり難い)からです。


ハードディスクの筐体は剛度の高いアルミでできている

少々横道にそれてしまいましたが、これでアルミの特徴を掴んで頂けましたでしょうか?

ですので、もしアルミでクルマを作ったとしたら、鉄よりも数倍かさばったボディーとなり、それ伴って数倍剛性の高いクルマになるという訳です。




13-2. 知られざるアルミの短所と長所/第13章:タイヤホイール





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